2014年7月28日月曜日

【家呑み】テーブルの上の情事

※今回の記事は外食の話題ではありません。あしからず。



日曜日の晩は、近所のTSUTAYAで借りてきた映画のDVDを見ながら久々に自宅で家呑み。

今夜の上映ラインナップは、
・『ペインテッド・ヴェール〜ある貴婦人の過ち〜』
・『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
・『バベットの晩餐会』
の3本。
(目についたものを手当たり次第に借りてきた、統一感皆無のラインナップ)

ちなみに鑑賞のお供は、
・焼き野菜のマリネ
・ラムチョップのスパイス焼き
それとワイン(泡1・赤1)にグリーンオリーブ。
暑い季節には無性にスパイスや酸味が効いたものが食べたくなる。



まず今宵の1本目の映画『ペインテッド・ヴェール〜ある貴婦人の過ち〜』(このサブタイトルは心底いかがなものかと思う)を再生し、景気づけにスパークリングワイン開けて料理を始める。
ナオミ・ワッツ、ブルネットも似合うなあ(この女優さんはリンチの『マルホランド・ドライブ』の金髪のイメージが強い)。

こうやって休日にお酒を飲みながらだらだら料理をするのがとても好き。
出来上がるのはいつも大体深夜。料理をしながらお酒を飲んでいる…というより、むしろお酒を飲む片手間に料理を作っていると言った方がいいと思う。
料理をするという行為自体が、私にとっては最高の酒の肴なのかもしれない。


今夜のスパークリングワインは、チリのSUNRISE。
雑味が少なくクリアな味わい。柑橘の風味と豊かな酸味が爽やか。泡立ちは細やかで弱め。
SUNRISEは今までにも何度か飲んだことはあったけれど、やっぱり美味しいなと改めて実感。
1000円ちょっとで買えるお手頃なものの中では出色のスパークリングではないかと。


焼き野菜のマリネは、焼き付けた野菜をオリーブオイルとバルサミコ酢と蜂蜜と醤油と少量のSUNRISEを混ぜて煮立てたマリネ液で和えただけの簡単メニュー。
バルサミコ酢と醤油の組み合わせってお互いを引き立て合ってとても好き。

ラムチョップのスパイス焼きはクミンやオレガノなど数種類のスパイスに漬け込んだラム肉をオーブンで焼いたもの。
すりおろしたライムの皮とキュッと絞った果汁で爽やかに。


ラムに合わせて赤ワインも開栓。 
Un Amour de Bordeaux 2010
ぎゅっと凝縮されたブラックカラントのような香り高いベリーの香りとキュンとする甘酸っぱさがある。タンニンが柔らかくて飲み口がマイルドなのはメルロー主体だからかな。後味はスパイシーだけど、とてもスイートな印象のワイン。
今晩のラムチョップとよく合って驚いた。クミンやらライムやらでエスニックな味つけにしたから合うかどうかちょっと不安だったけれど、スパイスの香りもライムの香りもきちんと受け止められるだけの包容力がある。
特にクミンとの相性がとてもいい。
「ボルドーの愛」の名前にふさわしく、エチケットには赤いハート。
ちょうどこれから見る『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』という映画はヴァンパイアの恋人たちが主役だし、我ながらなかなかのナイスチョイスではないかと自画自賛。

『オンリー・ラヴァーズ(以下略)』は退廃的で美しい映画だった。
隠者のようにこの世界の片隅に隠れ住み、あらゆる時代の美しいもの・知的なものと人の生き血を味わいながら、世紀を超えて愛し合うヴァンパイアの恋人たち。
ヴァンパイアカップルの片割れ、イヴ役のティルダ・ウィンストンが人間離れした高貴な魔性の美しさで、見ていて何度も震えが走った。
もう、肌や髪の質感からして人間のそれと同じものでできているようには思えない!
調べてみたら、彼女はなんと撮影当時すでに御年50歳を越えていたらしい。
ウィンストン自身がヴァンパイアなのではないかと疑ってしまう 笑

時間が経つにつれて飲んでいたワインの中にほんのり血のような鉄っぽい風味が出てきたように感じられたのは、この映画の中にワイングラスに入った血を主人公たちが美味しそうに飲み干すシーンが度々あったからかもしれない。
特にどこもかしこも真っ白なイヴが、唇と歯を真っ赤に染めて血の味に恍惚とするシーンは本当におぞましく、美しい。



1、2本目と食欲を減退させる映画(『ペインテッド・ヴェール』は伝染病が大流行中の中国の奥地が主な舞台、『オンリー・ラヴァーズ(以下略)』の食事シーンは基本的に血みどろ)が続いたけれど、3本目の『バベットの晩餐会』はうって変わって激しい空腹感を催す映画だった。

前半は主人公のバベットが住み込みで家政婦をしている牧師一家の敬虔な姉妹のエピソードが続いて正直少々退屈(姉妹が好んで口にする、あの黒パンをビールで煮ただけのどろりとした茶色い泥のようなパン粥のまずそうなこと!)だったけれど、バベットが料理人としての本領を発揮する後半は画面に噛り付いて見た。
デンマーク・ユトランド半島の寒村に暮らす粗食のキリスト教徒たちの舌を唸らす、贅の限りを尽くしたフランス料理とワインのフルコースの見事なこと…!
食前酒のアモンティリャード(シェリー)に、「なんという味!」と将軍が絶賛した海亀のスープに、ヴーヴ・クリコ(シャンパン)のグラン・ダネに、キャビアとサワークリームがたっぷりのったブリヌイに、飲めば禁欲的なクリスチャンの老婦人も思わずにっこり笑顔になってしまうルビーのように輝くクロ・ヴージョ(ブルゴーニュの赤ワイン)に、バベットのスペシャリテである鶉のフォアグラ詰め石棺風に…めくるめく晩餐に、萎えかけていた食欲が再びムクムクと頭をもたげてきたのは言うまでもない。



この映画の中でバベットは「食事を恋愛に変えることが出来る女性」と称され、その料理の才を讃えられている。
彼女をそう評した人物は、また、このようにも述べている。
「情事と化した食事においては、精神的欲求と肉体的欲求の区別がつかない。」


そんな素晴らしい情事を、私は生きている間に一体あと何回味わえるだろうか。
寝酒にワインをちびちび舐めつつ、映画の余韻に浸りながら眠りに落ちた。


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