2014年7月9日水曜日

【食べ歩きレポート】オー・シザーブル(六本木)

午前中の授業のあと、夕方まで時間があったので、今日の午後はどこかでランチをした後でバレエ・リュス展を観に行くことにした。

バレエ・リュス展の会場は国立新美術館なので、ランチは六本木近辺のお店にしようと思い、どこにしようかと暫く迷った末…以前から行ってみたいと思っていた、オー・シザーブルという老舗のフレンチレストランに決定。
Aux Six Arbres=「六本木で」という意味の小粋な店名が素敵!



ミッドタウンにほど近い細い路地を歩いていると、いい意味で六本木らしからぬ閑静な雰囲気の一角が出現。


あった。壁面に大きく「AUX SIX ARBRES」の文字。
ヨーロピアン調のシックな佇まい、丁寧に世話をされている青々とした店先の植木…高級感がありながら気負い過ぎない、通りがかりに「あ、入ってみたいな」と思わせる店構え。
これは美味しいものが頂けそう!


ドアを開けると、小柄で品の良いマダムが迎えてくれた。
店内はとことん正統派クラシカルな内装でまとめられている。
磨き上げられ鈍い輝きを放つフローリングの床、シミひとつないテーブルクロスは純白、艶やかなダークブラウンの木製の椅子は真紅のビロード張り。店内に流れる音楽はもちろんクラシック。
そこに佇む柔和な笑みを浮かべた物腰の上品なお店の名物マダム……とくれば、もう、どこからどう見ても完璧な懐かしの仏蘭西料理店(※あえての漢字表記)スタイルの完成だ。
席数は少なくこじんまりとしていて、アットホームな雰囲気。
かといって、その手のお店にありがちな「隙」(店員さんの私物が見えるところに置いてあるとか、電気コードの配線が丸見えとか。時にはそれがいい味をだしていることもあるけれど)のようなものは感じられない。
隅々まで手入れの行き届いた、妥協のない飲食空間づくりへのお店のこだわりを感じる。
常にさりげなく店内のいたるところに目を配るマダムの視線に、思わず背筋が伸びる。


今回私が注文したのは、CPが高いと評判の1600円のランチメニュー(本日の前菜、本日のスープ、メインの仔羊の肩肉のスパイシー煮込み、パン、デザート)。
真っ昼間だけど、もちろんワインも一緒にオーダー(本日のグラスワイン 1100円。フレンチのお店に来てワインを頼まないなんて、そんな重罪を犯せるわけがない 笑)。
赤ワインをグラスで注文したら、ギャルソンが2本のボトルを持ってきてそれぞれのワインの説明をしてくれて、どちらか好きな方を選べるとのこと。
ランチタイムから複数の銘柄のグラスワインが楽しめるのは嬉しい。
本日の赤はボルドーとコート・デュ・ローヌの2択だったので、メインの仔羊の煮込みのスパイスに合いそうなコート・デュ・ローヌを頼む。


かなり冷えた状態でサーヴされたワインからは、干し柿や干し杏のような香りと暑い国のスパイスのようなニュアンスを感じた。ドライながら、ほんのりと素朴な甘みを感じる。


ワインを吟味していると、パン籠を持ったギャルソンがやってくる。
3種類の自家製パンの中から、好きなものを好きなだけ取っていいらしい。


パンは薄切りのライ麦パンと小さな丸パン2種類(片方はプレーンで柔らかく、もう片方はハードで何種類かの穀物の粉が入っていそうなパン)。丸パンはほどよく温められていた。追加注文したカルピスバター(50円)をつけて頂く。

本日の前菜は、レンゲのような陶器の白いスプーンに乗った剥き身のエスカルゴ。


身が詰まったぷりっぷりのエスカルゴには、お約束の刻みパセリたっぷりの香草バターが。塩気が控えめでとてもマイルド。
スプーンに残ったバターは、もちろんパンで拭って跡形も残さない 笑

本日のスープは青豆の冷製ポタージュで、カクテルのように冷えたガラスのグラスに直接口をつけて飲む。


濃厚な豆の味の中にほんのりセロリのような香りが清涼感を添えている。

メインの仔羊の肩肉のスパイシー煮込みは、スパイシーなスープで煮込んだラム肉と野菜を炊いた玄米と押し麦にかけた一品。


店の内装同様、料理もとことんオーソドックスな王道フレンチなのかと思いきや、これは意外性のある一品。
老舗であっても型に嵌りすぎず、独創的なアイディアや遊び心を取り入れる余裕のあるお店って素敵だ。
ギャルソンが「フォークでは食べづらいので、カレーのようにスプーンでお召し上がりください」と言っていたけれど、確かにカレーみたいな料理だ(さしずめ「仔羊と夏野菜の北アフリカ風カレー 玄米・押し麦添え」とでもいったところか)。
野菜とスパイスの旨味が溶け込んだスープが美味しい。スパイスが主張し過ぎずあくまで上品な味わいで、エスニック風でありつつもフレンチレストランで出す一品にふさわしい料理になっている。
よく煮込まれたお肉が柔らかくて、繊維が口の中でゆるゆるとほどける。
別添えのハリッサ(赤唐辛子のペースト)を加えると、味がピリッと引き締まってより美味しい。
ちなみにこの料理と一緒に飲んだ先述の赤ワインは、ウイキョウのような香りがした(このワインは時間が経って温度が上がるつれて薬品系の香りが強くなっていった)。

デザートは2種類のジャムを挟んだカトル・カール。


カトル・カールというのはフランス語で4/4という意味で、小麦粉・バター・卵・砂糖の4(=カトル)つの材料が、それぞれ同量ずつ…つまり1/4(=カール)ずつ配合された生地を焼き上げたお菓子。
このお店のカトル・カールはとてもしっとりとしたきめ細かな生地でフレッシュな杏とブルーベリーのジャムが挟んである。軽い口当たりでいくらでも食べられそう。
一緒に頂いたコーヒー(+400円)も美味しかった。


デザートを食べながらコーヒーを飲んでいると、マダムがやってきて「お口に合いましたか?」と尋ねられた。
彼女は厨房にホールにと休む間もなく動き回りながら、手が空いている時にはテーブルを回り、料理の感想を訊いたり食材やワインにまつわる話をしたりと積極的に声をかけていた。
お店のホールにはマダム以外にも2人の若い男性スタッフがいたのだけど、1人は新人さんなのか、厨房でたびたびマダムから檄を飛ばされていた(と言っても、口調はいたって丁寧)ようだった 笑
まるでサッカー青年のように日焼けした、笑顔がまぶしいギャルソンさん…さすがにマダムの域にまで達するのは並大抵のことではないだろうけれど、ぜひこれからもお仕事頑張って頂きたい。




今回頂いたランチメニューは全体的にマイルドかつ軽めの万人向けの味つけで、量は少なめだった。沢山食べたい方にはいささか物足りないかと…(お腹いっぱい食べたい方は、もっと品数の多いコースを頼むべし)
1600円のコースでも、ワイン一杯と食後のコーヒーをつけると3000円を超えてしまうので、トータルで考えるとお値打ちランチ感はそこまでないかもしれない。
しかし、昼にこの価格帯でここまで丁寧なもてなしを受けながらゆったりと美味しいランチを頂けるお店はとても貴重だと思う。
次はぜひ、ディナーで再訪したい。


帰り際、まだランチタイムで忙しい中、マダムが店の外まで見送りに出てきてくれた。
「あら、雨が上がっているわ。さっきまで降っていたのに。お客様、晴れ女でいらっしゃるんですね」
にっこりと柔らかく微笑むマダムの笑顔に癒されつつ、「六本木」を後にした。






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オー・シザーブルフレンチ / 六本木駅乃木坂駅六本木一丁目駅
昼総合点★★★★ 4.0

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