2014年10月6日月曜日

【食べ歩きレポート】バールアリメンターリ ダニエラ(下北沢)

ある日曜日の晩、下北沢のイタリアンレストラン バールアリメンターリ ダニエラで、数日前に誕生日を迎えたばかりの古い友人Hと食事をした。


はっきり言って、Hはおよそ食というものに執着のない人間だ。
食べものの好き嫌いはほとんどないし、決して美味しいものを美味しいと感じられないわけではないが、基本的に食べものは「食べられればそれでよい」。
彼女と私はかれこれ10年以上の付き合いになるが、食に対する価値観についてはいっこうに共有できそうにない。

だが、私は決して諦めたわけではない。
こういう人間に心の底から「美味しい!」と言わせる瞬間にこそ、美食とともに「してやったり!」というグルマンとしての至上の喜びを味わえるというものだ。

さて、今夜はそのご相伴にあずかることができるだろうか。






この日は仕事帰りのHと店内で待ち合わせ。
ダニエラは下北沢駅南口から代沢方面に10分ほど歩いたところにある。
閑静な住宅街の中に忽然と現れるちいさなイタリアンレストラン。



あかあかと灯るライトに吸い寄せられるように入店。
日曜の午後7時、私のほかに店内にはワインを飲みながら談笑するビジネスマンの集団が1組いるのみ。


店名にもなっている「バール」というのはイタリア語で軽食喫茶店、酒場のことを指す言葉らしいが、たしかにお腹がすいたらふらっと入れる食堂のようなカジュアルでアットホームな雰囲気だ。


2人掛けのテーブル席に案内されたが、席は少々手狭。
デート向きの色気のある店、めかしこんであらたまって食事をする店…ではなく、気のおけない友人や家族とワイワイにぎやかに食卓を囲むのがふさわしい店だと思う。
提供される料理の価格帯を考えると、ちょっとカジュアルすぎるような気がしないでもないけれど…居心地は悪くない。
小さな子どものいるファミリーでも気軽に入れそう(これは良し悪しかもしれないが)。


Hを待つ間に食前酒を一杯やることにする。
ドリンクのメニューを見ると、このお店ではイタリア ヴェネト州のスパークリングワイン、プロセッコをグラスでいただけるらしい。
以前イタリアに旅行中に寄ったヴェネチアで飲んで以来、大のプロセッコ好きなのでこれは嬉しい。
早速プロセッコを一杯注文。
水色はごく淡い蜂蜜色。少し青い黄桃のようなフレッシュな甘酸っぱさの後にピリリとドライな辛みが通り抜ける。軽やかで美味しい。
ちなみにこちらのハウスワインはグラス550円とリーズナブル。
日替わりのグラスワインは800円、ボトルは3000円〜から注文できる。




飲みながらメニューを眺めていると、Hが到着。
もう一杯プロセッコを注文し、彼女の誕生日を祝して乾杯。
さて、今夜は何をいただこうか。

手書きのメニューには美味しそうな料理が目白押し。
ワインに合うおつまみや惣菜メニューも充実していて(テイクアウトも可能)、酒飲みにもやさしい品揃え 笑
前菜・パスタ・メイン・デザート・コーヒーのシェフのおまかせコース(5250円)というのもあったが、今回は好きなものを好きなだけ頼もうということでアラカルトで注文することにする。




今回私たちが頼んだものは以下の通り。


前菜
・本日の鮮魚のマリネ
・福岡ふるの牛のタリアータ ルッコラ、パルメジャーノのサラダ
・卵のインココット 黒トリュフをかけて

パスタ
・コルドネッティ からすみをかけて

メイン
・ホロホロ鳥のロースト

デザート
・洋梨のタルト
・カンノーリ




(女2人とはいえ、メイン1皿パスタ1皿では足りないかとも思ったけど、前菜は2人でシェアしてちょうど良いくらいの量だったし、食べ終えてみるとこれで十分だった)



まずは料理に合わせて白ワインを…ということで、ソアーヴェをグラスで注文。


柑橘系のフレッシュでクリアな味わい。後味はピリリとドライ。わずかなライムの皮のような苦味が感じられる。
これはカルパッチョに合うこと間違いなし!

本日の鮮魚のマリネはイサキか真鯛とのことで、イサキを注文(うっかり写真を撮り忘れてしまったので画像はなし)。
イサキの旬はもう過ぎたはずだけど、身はプリプリで適度に脂がのっている。
先ほどのワインと合わせると脂の甘みが際立つ。


カルパッチョをぺろりと平らげてしまうと、牛肉のタリアータが運ばれてきた。


軽く炙った薄切りの牛肉には、よく脂がのっていて舌の上でとろけるよう。
これまで食べてきたタリアータはもっと肉が厚切りのものばかりだったけれど、薄切り肉にはまた違った美味しさがある。
ルッコラがたっぷりと添えられていて、脂が多いのにするすると食べられてしまう危険な前菜 笑


もうひとつ頼んだ前菜、卵のインココットは絶品!


ココット皿に詰まったクリームの中に生卵を入れて焼き上げてあるらしい。
仕上げに目の前で黒トリュフをすりおろしてかけてくれるのだけど、これが気前よくたっぷり。
卵のうまみが濃厚なクリームにトリュフの芳醇な香りが絡んで、もう……!!
お皿の底まで舐め回したくなるほどの美味しさ。
2人して美味しい美味しいと夢中で食べる。

Hをして「みんながこれを毎日食べられるなら、きっと世界は平和になるよ!」と言わしめた逸品。
(してやったり!)



お次はパスタ、『コルドネッティ からすみをかけて』。


コルドネッティというのは細めの平打ちパスタのことらしい。
ラーメンの太麺にも少し似た食感の、ソースによく絡むもちもちしたコシのある手打ち麺。この麺自体がかなり美味しい。
からすみの濃厚なうまみとレモンピールの爽やかな香りとほろ苦さが絶妙にマッチしている。
結構塩気がきいていてお酒がすすむすすむ。


メインが出てくる前に赤ワインを頼む。
メイン料理のホロホロ鳥のローストに合いそうなワインを尋ねたところ、ロッソ・ディ・モンタルチーノをおすすめいただいたので、迷わずそれを注文。


よく熟れたアメリカンチェリーのようなほどよい甘みと酸味。ほんのり土の香りもする。
とてもジューシーで溌剌とした健康的な色気のあるワインという感じ。
このロッソをさらに熟成させたブルネロ・ディ・モンタルチーノがワインの女王様だとすると、さしずめロッソは王女様といったところだろうか。

メインのホロホロ鳥のローストは、部位の違う3種のホロホロ鳥の肉のローストを盛り合わせたもの。


塩コショウのシンプルな味付けで肉の味わいを楽しめる一皿になっている。
ホロホロ鳥の鶏肉よりも赤身がちでうまみが濃い肉には、ロッソのようなミディアムボディの赤がちょうどいい。
キジの仲間らしいが、以前食べたキジ肉のローストと比べると癖がなくて食べやすいような気がする。



食後にカフェラテと一緒に頼んだカンノーリは、ココアを練りこんだ春巻きの皮のような硬い生地でリコッタチーズのクリームを包んだデザート。


シチリア発祥のお菓子で、映画『ゴッドファーザー』にも登場するという(劇中に「銃は置いていけ。カンノーリは持ってきてくれ」というセリフがあるらしい。私はこの映画をDVDで2度も見たはずなのにまったく覚えていなかった)。
砂糖が入っていない外側のビター生地に洋酒がきいたリコッタチーズのクリームの上品な甘み、砂糖漬けのチェリーがアクセント。
サックサクの心地よい食感もあいまって、くせになりそうな美味しさ。
何本でも食べられそう!

Hのデザートは洋梨のタルト。
事前にお願いしていたので、お店の方がお皿にイタリア語でバースデーメッセージを書いてくださった。
Buon Compleanno!!
(お誕生日おめでとう!!)




この晩のお会計は2人で13000円ほど。いただいた料理とワインの内容を考えるとちょっと安いくらい。
ゆったりと寛ぎながら本格的なイタリア料理を食べられるいいお店だ。
また来よう。
晴れた日に外のテラス席でランチ…なんていうのもきっと素敵だろう。

Hも気に入ってくれたようでなにより。
彼女から次はどんな「美味しい」を引き出そうか…目下画策中である。

2014年9月22日月曜日

【食べ歩きレポート】パリ セヴェイユ

漫画家のよしながふみが『愛がなくても喰ってゆけます』というグルメエッセイ漫画の中で「普通の食事に比べると甘い物の好きさ加減は7割くらいだ」と書いていたけれど、私にとっても甘いものというのはちょうどそんな感じだ。

あったら嬉しいけれど、なかったらなかったで構わない。

子どもの頃は毎日3時のおやつを欠かすことがなかったし、10代の頃にはケーキ好きが高じてケーキ屋でバイトをしていたこともあった私だけど…20歳を過ぎてお酒を嗜むようになってからというもの、菓子類の消費量はあきらかに激減した(唯一の例外はチョコレート)。
コース料理の最後にはなにかデザートが欲しいと思うけれど、それは甘いものを食べたい欲求というよりは、形式上食事の締めくくりとして欠くことのできない要素に対する欲求なのだろう。

小腹の空いた昼下がり、私がまず考えることは
「そうだ、おやつを食べよう」
ではなく
「そうだ、ちょっとしたおつまみで一杯やろう」
なのだ。





だがしかし、もしもそこが午後3時の自由が丘だったとしたら…?

なにか甘いものを口にせずにいられようか。
いや、いられまい。
なにしろそこはスイーツの聖地・自由が丘なのだから。
多少なりとも甘味を嗜む人間であれば、この街に来たらケーキを食べつつ優雅に茶をしばくことはもはや義務のようなものだ。






ある平日の午後3時過ぎ、私は自由が丘の街中の広い歩道に設えられたベンチでiPhoneと睨めっこしていた。

これからどこの店にケーキを食べに行くか…それが問題だ(甘いもの屋を何軒もはしごできるだけのキャパシティは私の別腹にはない)。
自由が丘界隈にはとにかくパティスリーの名店がひしめきあっているので散々迷ったが、今日はまだ一度もお店に伺ったことのない(伊勢丹のマ・パティスリーとサロン・デュ・ショコラに出店していた時にケーキを買ったことはある)パティスリー・パリ セヴェイユを訪れることにする。

駅から線路沿いに歩いて行くと、お目当ての店が出現。


Paris S'eveille=パリの目覚めという店名にふさわしく、この一角だけ正真正銘のパリのお菓子屋さん…!
まるでパリのサントノレ通りあたりの老舗パティスリーをそのまま切り取ってもってきたかのよう。
(上階のヘアサロンなんか目に入らないったら入らない…笑  でも、もし私がこのビルのオーナーだったなら、この二階部分に入れるテナントは花屋か女の子向けのかわいい雑貨屋に限定すると思う )
雰囲気たっぷりの外装に胸が高鳴らせながら、ドアを開ける。







※店内は一切撮影禁止とのことなので、ここからは私の拙い文章のみでお送りします。


お店の中に入った途端、お菓子やパンの焼ける甘くて香ばしい香りと、イートインスペースで談笑する女性たちの優雅な笑いさざめきに包まれる。
こういうお店に来ると「ああ、ここは自由が丘なのだ…」と、あらためて実感する。
入口正面のガラスのショーケースの中では、洗練された装いの色とりどりの美しいケーキたちが選び出されるのを待っている。
ケーキのラインナップは生ケーキだけで20種類程はあるだろうか。

ブーランジェリー(パン屋さん)も兼ねたこのお店の窓際の棚と、販売スペースとイートインスペースを区切るどっしりとた大きな木のカウンターの上には、こんがりと小麦色焼けた、見るからに美味しそうなパンと焼き菓子が所狭しと並ぶ。
このどっさり感が、いかにも外国のお菓子屋さんらしい。
バラエティ豊かにずらりと並べられたお店オリジナルのコンフィチュールの瓶と個包装の焼き菓子たち、編み籠一杯に入ったパン、ガラスのケーキ皿に盛られたパイやタルト、セロファンとラフィアで包装されごろごろと並べられた大きなバターケーキ、さらに駄目押しと言わんばかりにパリのお菓子屋さん情緒を演出するマカロンタワー群…

全種類制覇しようと思ったら、一体どれほどの時間がかかるのだろう。
そして、お菓子屋さんでこんな風にたくさんのお菓子に囲まれている時にいつも感じる、このえもいわれぬ幸福感は一体なんなのだろう(たとえ同量の野菜や肉や魚介に囲まれたとしても、おそらくこんな幸福感は感じられないだろう)。
もはや甘いものを口にしなくても、この眺めをお茶請けに美味しい午後のお茶がいただけそうな気がする。


このお店ではイートインの場合でもケーキは販売スペースで注文して、飲み物はあとからテーブルで注文するシステムらしい。
ショーケースの前で少し迷った末、ムッシュ・アルノー(560円)とタルト・オ・フリュイ・ルージュ(価格は失念)
を注文して、イートインスペースへ。

入店したのは平日の午後3時過ぎだったけれど、イートインスペースはほぼ満席。
運よく空いていた壁際の二人掛けのテーブルに案内される。
ケーキのお供にアッサムティー(700円)を注文。
ホットティーはポットでサービスしてくれるのが嬉しい。



タルト・オ・フリュイ・ルージュは、その名の通り赤いフルーツのタルト。
バターの香り豊かなザクっと噛み応えのあるタルト生地の中に詰まっているクリームはクレーム・ダマンド(アーモンドクリーム)かと思ったら、この香ばしい香りはピスタチオだろうか。
とても濃厚なクリームだけど、甘すぎず、ベリーの甘みを殺さない。
クリームの上には、ラズベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、グリオットチェリー、赤スグリ…こぼれんばかりにどっさりと乗った宝石のようなベリーたち。
果実の一粒一粒がフレッシュで甘酸っぱくて美味しい。

タルト生地・クリーム・果物の味わいのバランスが絶妙で、素晴らしい一体感。
フルーツタルトって、ひとつひとつのパーツ(タルト生地・クリーム・ムース・フルーツetc)は美味しくても、正直単体で食べた方が美味しいのでは…というものも多いけれど、これはまさに三位一体のタルト!



ムッシュ・アルノーはミルクチョコレートとナッツとオレンジの味のケーキで、オーナーパティシエの金子シェフがかつて師事していたフランス人パティシエ アルノー・ラエール氏の名前を冠した、このお店のスペシャリテのひとつ。

ナッツの香り豊かなダックワーズの土台の上には、サクサクとした食感の香ばしい薄焼きクッキーと大きめに砕かれたナッツがごろごろ入ったプラリネ、その上にはミルキーな薄い板チョコレートが二枚重ねられ、さらにその上にはオレンジ風味の滑らかな口溶けのミルキーなチョコレートガナッシュがたっぷりと絞り出されていて、そこに波状に湾曲した薄いチョコレートと小さく切ったオレンジの果肉が飾られている。

口にした瞬間、弾ける爽やかなオレンジの香り!
一気に鼻腔を駆け上がるオレンジの香りをあとからふんわりと包み込むのは、まろやかでクリーミーなチョコレートの味わい。そして噛み締めれば噛み締めるほど広がっていく、ローストされたナッツの香ばしい風味。

さまざまな食感と味わいのコントラストが楽しむことができる、とても立体的な構成のケーキだ。
食べようとすると、どう頑張っても異なる素材を積み重ねられた層を破壊してバラバラに分解してしまうので、相当食べ辛いけれど……お皿の上をめちゃくちゃに散らかして周囲の顰蹙を買ってでも食べる価値のあるケーキ。

甘いミルクチョコレートがそこまで得意ではない私としては、かなり濃厚なミルクチョコレートとナッツの味わいに途中で少し飽きがきてしまったけれど、マイルドでナッティなチョコレートケーキがお好きな方には本当にたまらない逸品だと思う。






これで、もっとゆっくりと品物を選んで、広々とした場所でイートインすることができたら言うことなしなのだけど…
人気店で常に混んでいる上に、販売スペースがあまり広くないので、買うものを決めてさっさと出ないといけない雰囲気なのが(特に私のように決めるのに時間がかかる人間には)ちょっと辛い。
イートインスペースには二人掛けのテーブルが10席ほど。
私が席を立った時には、二組ほど席が空くのを待っているお客さんがいた。
テーブル同士の間隔が狭いので、席に着くのも一苦労。隣の席の会話は丸聞こえ。
正直、あまり落ち着いてお茶を楽しめるような雰囲気ではない。
おいしいケーキとお茶は、やっぱり腰を据えてゆっくりといただきたいものだ。

ぜひいつか、今ヘアサロンが入っている二階部分を買い取って、一階はショップのみにして二階をサロン・ド・テに…!(お店の外観もさらに完璧になるし、一石二鳥ではないだろうか)

2014年9月10日水曜日

【食べ歩きレポート】MOGMOG(下北沢)

この前の日曜日、前日から大学の部活の先輩Aさんのお宅に泊めていただき明け方まで呑んでいて、目が覚めるとすでに昼過ぎになっていた(お約束)。
せっかくの休日だし、どこかで素敵な朝ごはん…もといブランチを食べよう!と、Aさんと一緒にお泊りしていたもう一人の先輩Cさんと3人でAさん宅を出たのは午後2時過ぎのこと。



ランチタイムL.O.の時間ギリギリに入店した下北沢の某イタリアンレストランに「ランチのオーダーはもう終わってしまったのでご入店いただけません」とフラれてしまい、急遽本日のブランチスポットとして白羽の矢が立ったのがMOGMOGというお店。

どうやらパンケーキの店らしいけれど、グルメサイトに載っている店のイチオシメニュー(もちろんパンケーキ)の写真には、ココット皿の中に入ったこんがりと焼き目がついたホワイトソースらしきものが写っていて、どう見てもグラタンかなにかにしか見えない。
「この料理のどこがパンケーキなんだろう…?」と興味を引かれ、正直怖いもの見たさ(食べたさ)で行ってみることに。


お店は井の頭線下北沢駅の西口を出てまっすぐ左に進み、坂道を下っていって小田急線の踏み切りの手前で右折したところ(西口から徒歩5分くらい)にある。
絡まる蔦と入口の前で出迎えてくれるチョークアートの看板がかわいらしい。





中に入ると、ふんわりと焦げたバターのいい匂い。
白壁に木製の家具が並ぶ明るいカフェ風の店内は、おしゃれだけどなんだかほっとする温かみのある雰囲気。
壁際には子どもの頃に読んだ懐かしい絵本が並べられている。小さなお子さんを連れて来店するお客さんも多いのかもしれない。
外の看板にもcafe&chalk artとあったけれど、店内ではチョークアートの体験(ドリンクつき4000円)もできるらしく、お店の一角にはお客様作品(それもかなり小さなお客様の)らしき絵が飾られている。

店内の席数は20席。日曜日の午後4時頃で、8割方埋まっている。
あいにく3人で座れる席が空いていなかったので、入ってすぐのところにある小さな2人掛けテーブルに補助椅子をひとつ出してもらい、メニューを見ながら空くのを待つ。

お店のメニューはドリンクとパンケーキ各種、それにグラタンやサラダやオリーブ、ソーセージの盛り合わせなどのサイドメニューがいくつか。
飲み物はソフトドリンクだけではなく、意外なことにお酒(ビール・ワイン・カクテルなど)も置いてある。
サイドメニューをつまみにお酒を飲んでカフェバーのように使うことも可能なのかもしれない。
パンケーキのメニューは豊富で、一番オーソドックスなバターミルクパンケーキをはじめ、甘いおやつパンケーキもしょっぱい食事パンケーキもそれぞれ5〜6種類ずつほどある。
中には担々麺に着想を得ているらしい『ピリ辛!!担々パンケーキ』なんて変わり種の期間限定メニューも。



どのパンケーキにも+100円〜200円で各種トッピング(お店で作っているというジャム・クリーム・アイスクリーム、それにフルーツ類、しょっぱいものだとフライドエッグやベーコン・ソーセージなんかの肉類など)を追加することもできる。
さらに+300円でドリンクセットかミニスープ&ミニサラダセットに、+500円でドリンク&ミニスープ&ミニサラダセットにすることも可能。


15分ほど待って4人掛けの席が空いたので、そちらに移ってオーダーする。
私が今回注文したのはもちろん、グルメサイトに載っていたあのグラタン状のパンケーキ『ホワイトソースとチーズのとろとろパンケーキ』(1000円)。
トッピングにフライドエッグ(150円)とロングソーセージ(200円)を追加。
本当は限定20食の『ラザニア風パンケーキ』というのもかなり気になっていたのだけど、こちらは平日限定メニューとのことで断念。
ドリンク(アイスコーヒーにした)とミニスープとミニサラダがつくCセットで注文。



注文してから10分ほどで、ドリンクとミ ニサラダとミニスープが出てくる。



この日のスープはきのこと卵と青梗菜が入ったスープ。中華風の味わいで、これだけでも丼いっぱい飲みたいくらい美味しい。



スープとサラダを食べ終えると、順番にパンケーキが運ばれてくる。
先に運ばれてきたCさんのバターミルクパンケーキを一口味見させてもらった。
注文を受けてから粉を混ぜて焼くという焼き立てのパンケーキはしっとりふかふか。バターとメープルシロップ(テーブルにボトルごと置いてあり、かけ放題)とトッピングのりんごジャムで頂く。
生地自体の甘さは控えめ(かと言って、決してまったく甘くないわけではない)、あっさりしていて素朴な味わい。
柔らかいけれどそこそこ弾力があってしっかりとした食感で、個人的にかなり好みなパンケーキ(欲を言えばもうちょっと粉の味を強く感じられてもいいような気もするけれど)。
素材の良さが光る、とても上質なおやつ。

そしてまた、追加トッピングで頼んだバナナアイスがものすごく美味しい…!
見た目はちょっと黒っぽい色であまり良くないけれど、味は絶品。
まさにバナナをそのままアイスにしました!という感じで、余計なものがまるで入っていないまっすぐな味わい。



みんなで美味しい美味しいとアイスに舌鼓を打っていると、いよいよ私とAさんが注文した『ホワイトソースとチーズのとろとろパンケーキ』が、焦げたチーズのいい香りを纏って登場。






……やっぱり、どう見ても目玉焼きとソーセージが乗ったグラタンにしか見えない 笑
それではパンケーキは一体どこにあるのかというと、このグラタン状のソースの中(皿の中央、少し盛り上がっている円形の部分の下に)入っている。
こんがりと焼き目がついた熱々のホワイトソースの中には、パンケーキがまるまる二枚隠れている。

正直なところ、実食してみるまでパンケーキをこんな風にグラタン状にして食べる必然性がまったく感じられず、単に奇を衒ったメニューなのかと思っていたけれど…ほんのり甘いふかふかもちもちのパンケーキと粉チーズがたっぷり入った塩気の効いたどろりとしたホワイトソースが味・食感ともに見事に調和していて、非常に美味しい。

二枚のパンケーキの間には粒マスタードとザワークラフトが挟み込んであり、味わいに素晴らしい酸味のアクセントを添えている。
追加注文したトッピングのフライドエッグは個人的にマストだと思う。
半熟の黄身がソースの塩気をまろやかにし、かつ味わいにコクを増してくれる(もう一つのトッピングのソーセージも、パンケーキに挟まれたザワークラフトと一緒に食べるとちょっとアルザス風シュークルートを食べているような気分が味わえて、我ながらなかなかのナイスチョイス)。


しかし驚いた…これは新しくて美味しいパンケーキの食べ方だ。
パングラタンならぬ『パンケーキグラタン』といでもいったところだろうか。
これは是が非でも近いうちにラザニア風パンケーキも食べに来なくては!
いっそのこと、件の意欲作・担々パンケーキにもチャレンジしてみようかしら…なんて気分にさえなってくる。





ちなみに今回の自分の分の会計は1900円。
ついつい海外のパンケーキ屋のやたら強気な価格設定と比べてしまい、色々トッピングを乗っけてドリンクとミニスープとミニサラダのセットでこのお値段なら良心的かな、と思ってしまう私の感覚は若干麻痺しているのかもしれない。

会計時にお店のポイントカードを頂いた。
パンケーキをひとつ注文する毎にスタンプがひとつ押されて、12個貯めると好きなパンケーキを一皿かチョークアート体験を一回無料で出来るらしい。

このカードがスタンプで埋め尽くされる日も、そう遠くはないかもしれない…

2014年9月5日金曜日

【旅先グルメ】夏の山陽地方旅行

ご無沙汰しております、管理人のMです。
9月に入り朝夕はだいぶ涼しくなってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

夏の間は少々プライベートが立て込んでいて、ブログの更新が滞っておりました。
諸々ひと段落しましたので、またぼちぼち投稿していきたいと思います。





先月末、友人たちと中国・山陽地方(広島・岡山)へ旅行に行ってきました。
広島市内から宮島→呉→大久野島→尾道→倉敷→岡山市内まで、5日間の旅。
観光はもちろん、瀬戸内の美味しいものをたくさん頂いてきました。
とにかくよく呑み、よく食べた!
現地の魅力的な食べものとお酒たちの誘惑に、財布の紐はゆるみまくりでしたが…ほんの僅かでも、先月広島で起きた土砂災害の復興支援になれば。
出来るものなら旅先で食べた(呑んだ)ものをひとつひとつご紹介したいところですが、それだとキリがないので撮った写真をまとめてコラージュにしてみました。



広島も岡山もいいところだった…また遊びに行こう。




2枚目の写真は尾道でまとめ買いしてきたレモングッズコレクション。
本当に、広島は私のようなレモナー(レモン愛好者)にはたまらないところ!
ほんのり甘みがあり、酸味がまろやかで安全(防腐剤不使用)な広島県産レモンのファンです。
早くも「レモンの泉」を一本使い切りそう 笑

2014年8月9日土曜日

【食べ歩きレポート】deco(渋谷 神南)

ある平日の昼過ぎ。
炎天下の中、私は神南の坂道を歩いていた。
道玄坂、宮益坂、スペイン坂、オルガン坂…つくづく思うが、渋谷は本当に坂の多い街だ。

今日の午後は宇田川町のアップリンクに友人Hから猛烈に薦められたホドロフスキーの『リアリティのダンス』という映画を観に行く予定になっている。
「そうだ、今日こそ神南のdecoでランチを食べよう!」と思い、勢い込んで家を出てきた。
真夏の猛暑にも負けず、連なる渋谷の坂道にもめげず…貧弱な身体に鞭打った甲斐があって、なんとかランチタイムのラストオーダーの14時には間に合いそうだ。

decoはジビエが美味しいと評判のフレンチレストランで、ランチタイムには(ジビエは出ないが)とてもお得で美味しいコースメニューをいただけるとのこと。
前々からずっと一度は訪れたいと思っていて、近くに用事があった時についでに寄ろうと思っていたのだけど、駅から離れた少し不便な場所にあることもあって、なかなかその機会がなかった。
本日、ついに念願の初訪問…!


お店は渋谷・神南のアパレルショップ(SHIPSやらFREAK'S STOREやら)が密集した通りから一本細い坂道を上がったところにある。
地下にあるので、気をつけて見ていないとうっかり見落としてしまいそう(一階にメニュー黒板がでているけれど、建物のオシャレさもあいまって、遠見に見るとヘアサロンかなにかのメニュー表と勘違いしかねない)。



あった、decoのランチメニューが書かれた黒板!
これが噂の2100円のランチコースか…どのメニューも気になる。


地下に下りる階段の中程には、ディナータイムのメニューも立て掛けられている。


黒板には大きく「盛夏」の文字。
メニューも随所に夏を感じさせるラインナップ。季節感を大切にするお店は素敵だ。
おまけに「夏ジビエ」だって…?
ジビエ好きとしては、これはぜひお店の方に詳しいお話を伺わなければ。
勇んで勢いよくドアを開ける。





ドアが開いた瞬間、店内に満ちていた活気に軽く気圧される。
カウンター6席、テーブル席12席ほどの店内は、ランチタイムL.O.間際の時間にもかかわらず女性グループとカップルでほぼ満席。
運良くカウンターの真ん中の席がひとつだけ空いていたので、そこに通される。
危なかった…じきにラストオーダーの時間だし、もし2人以上で来ていたら、またしてもここのランチを食べ逃していたかもしれない。

お店の内装は白とブラウンでまとめられていて、木材の風合いが温かみを醸し出している。
気取り過ぎず、カジュアル過ぎず…適度に肩の力を抜いて思う存分食事を楽しめそうな居心地のいい空間。
カウンターからは厨房の様子を間近に眺めることができ、ライブ感たっぷり。
厨房では2〜3人(途中で1人増えた)のスタッフが忙しなく調理をこなしている。
給仕・接客は主にサービス兼ソムリエの若い男性が一人で行っているようだ。


ランチタイムのメニューは、前菜+メイン料理+パン+デザート+コーヒーで2100円のコースと2100円のコースに前菜を1品増やした2950円のコースとメインを1品増やした3300円のコースがある。


ランチタイム限定のお得なグラスワイン、ランチワインは赤白ともに800円で、その日のランチメニューに合わせて替わるらしい。



今回私がいただいたものは以下の通り。

・前菜: タコのバジルソースマリネ
・メイン: 牛カイノミのロースト 夏野菜を添えて
・パン
・デザート: 白桃のコンポートとジャスミンのジュレ バニラアイス添え
・コーヒー
(以上、2100円のコース)

・ランチワイン白(グラス一杯800円)
Château la Clémence 2006(グラス一杯1200円)



前菜、メインともに肉料理と魚料理がそれぞれ一種類ずつあり、どちらか選ぶことができる(デザートは選択肢なし)。
この日のもうひとつの前菜(肉)はパテ・ド・カンパーニュ、もうひとつのメイン(魚)は真鯛のポワレ。
さんざん迷ったけれど、今回は魚➡︎肉でいくことにする。

料理を注文した後、サービス兼ソムリエの福岡さん(帰り際にお名前を伺った)に「お飲み物は?」と訊かれ、もちろんワインをと答える。
「では、白からお出ししましょうか…グレープフルーツのような爽やかな香りのあるワインです」
とサーヴしてくださったのは、本日のランチワイン(800円)の白、ブルゴーニュのアリゴテ。


おっしゃる通りグレープフルーツの皮のような僅かに苦み走った爽やかな香りに続いてナッツオイルのようなマイルドな香味とコクが現れる。酸味は控えめ。


ワインと一緒に出されたパンは、ぎっしりと身の詰まった、粉の味がしっかりと感じられるバゲット(ひとつ食べ終えるともうひとつ持ってきてくださったので、どうやらおかわり自由らしい)。
シンプルな味わいとかすかな塩気が食事の味を引き立てる。


前菜が出てくる前にうっかり飲みきってしまわないよう、ちびちびとワインを味わいながら店内の様子を眺めていると、カウンターの端に置かれている花瓶に孔雀と雉のものとおぼしき羽根が飾られていることに気付く。


これはまさか…お店で供するために毟った鳥の羽根では?
そちらを凝視していると、「これはディナーでお出しする野鳥の羽根です…ジビエ、お好きですか?」と福岡さん。やった、予感的中!
「大好きです」と即答すると、なんとあとでジビエの実物を見せてくださるとのこと。
食事の楽しみがさらに増えた。


注文してから20分ぐらいで、前菜のタコのバジルソースマリネが出される。
2100円のコースの前菜とは思えない、この目にも鮮やかな美しい盛り付け…!


ぷりぷりで柔らかいタコともったりとした濃厚なバジルソースと口の中でプチッと弾ける甘酸っぱくてジューシーなフルーツトマトの幸福な組み合わせ。
このマリネを食べながら飲むと、やや尻すぼみ気味に感じられたワインの味わいに、ドライでスパイシーなニュアンスの余韻が加わる。バジルとの相性がとても良いみたいだ。



メイン料理をいただく前に、メインに合わせた赤ワインをグラスでいかがですかと勧められる。
ランチワインでもいいけれど、前菜が美味しかったのでメイン料理にも期待大だし、せっかくならより料理に合うワインと一緒にいただこう。
好みを訊かれたので「華やかさがあって軽すぎないものを」とお願いすると、福岡さんは「なるほど…いいのがあるので持ってきますね!」と、軽やかな足取りでワインセラーへ。
(ちなみにこのお店では常時赤・白それぞれ4〜5種類のワインをグラスで提供しているそう)

今回選んでいただいたのは、ボルドー ポムロールの赤ワイン Château la Clémence 2006(グラス一杯1200円)。


なめらかなタンニン、スパイスで味付けされたチェリーやプラムのような洗練された果実味…エレガントな味わいの中に、細かい粒子が味蕾をひとつひとつ刺激するようなシャープな辛味がある。
まさに華のある味わいで、とても私好みのワイン。


うっとりと美味しいワインに酔いしれていると、メイン料理の牛カイノミのローストが登場。


お肉の見事な焼き色と、ドーンと盛られた付け合わせの野菜の迫力に、思わず目を瞠る。
カイノミは濃いピンク色の肉の表面にうっすらと血の色が滲むレア…最高の火の入り加減!
脂身のない肉を添えられたマスタードソースでさっぱりと食べても美味しいし、粗挽き黒胡椒がかかっている部分はそのままで食べても肉の味が引き立って美味しい。
肉の香り・味わいと合わさることでワインがほんのり甘みを帯び、より官能的な味わいを増すように感じられた。

カイノミのローストにたっっっぷりと添えられた(むしろ量的には主役級 笑)夏野菜は、シェフ自ら現地に赴き、契約した千葉県の農家から直接仕入れているという。
土の香りと甘み・旨みが濃くて、大地のパワーを感じられる。



食事をしていると、おもむろに木製のトレイに入った食肉加工前のジビエの実物がカウンターの上に運ばれてきた。
隣で食後のコーヒーを飲んでいた女性グループのリクエストで出てきたようで、ついでに私も見せてもらう。
まだ羽根を毟られていない孔雀と雉、毛皮のついたままの仔猪を前にして「かわいそう!食べられない!」「お肉食べてる時に見なくてよかったあ」とわーきゃー騒いでいる彼女たちの隣で、カイノミを頬張りながらじっと眺める。

横から注がれているやたら熱い視線に気が付いたのか、福岡さんがジビエの載ったトレイをこちらに持ってきて間近でよく見せてくださった。

なんという食事風景 笑

自然が生み出す造形美…鳥たちの羽毛や猪の毛並みの美しいこと。
「これはどこで獲れたものなのですか?」
「どこを撃って仕留められているのですか?」
「どんな料理になるのですか?」
隣の女性グループが明らかに引いているのも構わず、せっかくなのであれこれ質問する。

孔雀と雉

孔雀は沖縄の石垣島で獲れたもの(孔雀は本土では禁猟鳥だけど、孔雀による食害が深刻化している沖縄県では害獣指定されており、捕獲が可能らしい)で、ゴーヤやコーンなどを主食にするためその肉にはどこか南国を感じさせる味わいがあるという。

仔猪

まだうっすらと背中に縞模様が残る、ウリ坊に毛が生えたような(もちろんウリ坊にだって立派に毛は生えているが)幼い猪。蹄がまだツルツルのピカピカで、野山を駆け回った月日の短さを物語っている。
筋肉の未発達な肉はとても柔らかくミルキーでまろやかな味わいらしい。
一頭丸ごとローストにして供されるのだとか。


ジビエたちを眺めながらメインを平らげると、デザートが運ばれてくる。
本日のデザートは白桃のコンポートとジャスミンのジュレ バニラアイス添え。


すでに帰った隣の女性グループのデザートは紅茶のブランマンジェだったようだけど、それは品切れになったらしい。
しかし、白桃は大好物なのでむしろ得した気分。
ガラスの器とコンポートの下に敷かれた薄桃色のジャスミンのジュレが目にも涼しげ。 
桃にジャスミン…夏を感じる組み合わせ。それもフェミニンな夏のイメージ。
白ワインで煮てあるという旬の白桃のコンポートは、とてもジューシーで上品な甘さ。スプーンで簡単に切れてしまうほど柔らかい。
ほんのり酸味のあるさっぱりとしたジャスミンティーのジュレとバニラビーンズがぷちぷち入った濃厚なバニラアイスと一緒に食べると、至福の瞬間が訪れる。
異なる味わいと温感の絶妙なコンビネーション。
デザートまで決して抜かりはない。




食後のコーヒーを飲みながら、素晴らしい昼食の余韻に浸る。

ふと気が付くと、店内に残っている客は私一人になっていた。
愉しい食事に思わず時間を忘れてしまった!と焦ってお暇しようとしたら、先ほどの私と福岡さんとの会話を聞いていらしたのか、「ジビエがお好きなのですか?」とお店のシェフが来られて、色々とジビエにまつわるお話をしてくださった。
こちらのシェフは、なんとご自分でも狩猟をなさるのだとか!
実は私もジビエ好きが高じて狩猟に興味を持ち始めまして…と告白すると、「それでは『狩りガール』(山ガールならぬ、狩りガール。近頃狩猟をする女子のことをこう呼ぶらしい)になられてはいかがですか?」と素敵なお誘いを受けた上、渋谷の銃砲店の場所まで教えていただいた 笑

シェフは本当にジビエがお好きな方のようで、お話していてジビエに対する愛情と情熱をひしひしと感じた。
こんな方が作るジビエ料理が美味しくないはずがない…!
近いうちに必ずジビエをいただきにディナーで再訪することを決意し、お店をあとにする。


お会計は4100円。
ランチの価格としては決して安くはないけれど、料理もワインも美味しく、お値段以上の価値がある幸せな昼食だった。
なぜ私はもっと早くこのお店に来なかったのだろう…こんなに素晴らしい食事にありつけるのなら、神南の坂道などなにほどのものでもないではないか!と過去の自分の怠慢を猛省。
その分、これから足繁く通わせていただくことにしよう。
またひとつ、お気に入りのお店ができた。






…と、いうわけで。
近いうち(8月、9月中)に私とdecoにジビエディナーを食べに行ってくださる方を募集します 笑
美味しいワインを飲みながら、ご一緒に夏ジビエ料理に舌鼓を打ちませんか?
予算はワインを含め1人15000円前後(に収めたい)。
ご興味のある方はMまでご連絡ください!

2014年8月4日月曜日

【食べ歩きレポート】キッチンプラス(自由が丘)

時々無性においしい洋食を食べたくなる。 

フレンチでもイタリアンでもない、あくまでも「洋食」である。
明治大正期の日本人の西洋への憧れが詰まった、白いごはんによく合う西洋風日本料理…それが洋食。
もともとは文明開化の頃、来日する外国人向けに見よう見まねで作られた擬洋風建築ならぬ擬洋風料理がルーツらしい。

以前、横浜のとあるホテルのレストランで明治時代のレシピを再現したライスカレー(「カレーライス」ではない、あくまでも「ライスカレー」)を頂いたことがある。
蛙の肉が入っていたり、玉ねぎの代わりに長ねぎが使われていたり、あまりスパイス感はなく魚介の出汁の味わいが強かったり…具材から味つけからなにから現代のカレーとはかなり異なる、けれどそれはそれで不思議な魅力のある一皿になっていた。
擬洋風の建築同様、まだ「和と洋の融合」「和洋折衷」と言えるほど洗練されてはいなくて、粗削りで色々と甘いところやアンバランスなところもあるけれど、御一新の時代を生きた日本の職人たちのまだ見ぬ西洋に対する強い憧憬と、「こんなの作りたい!」というやや上滑り気味の激しい情熱が感じられる、愛おしいカレーだった。
現在私たちが食している洋食は、そんな擬洋風料理の流れを受け継ぐ料理なのだ。







閑話休題。



というわけで。
洋食食べたい病の発作が起きたある平日の晩、自由が丘の行列のできる洋食屋さん キッチンプラス(Kitchen+)を初訪問。

お店は自由が丘駅北口から7〜8分ほど歩いた自由通り沿いにある。



周囲の風景に溶け込むごくごく地味な店構えで、気をつけていないとうっかり見落としてしまいそう。
ディナータイムのお店の開店時間は18時。
私がお店の前に着いた17時45分の時点では、まだ並んでいる人はいない。
どうやら本日のディナータイムに一番乗りできそうだ。

開店を待つ間になにを注文するか決める。
ドアの前に立て掛けられたメニュー黒板には、ハンバーグにオムライスにメンチカツにビーフシチュー…魅惑の王道洋食ラインナップ。
私の目に留まったのは「ビーフカツレツ  デミグラスソース」の文字。



先日、ネイルサロンのテレビでドラマ『ランチの女王』の再放送を見ていて、劇中で竹内結子が美味しそうに頬張るビーフカツレツを無性に食べたくなったのを思い出した。
そうだ、今夜はビフカツにしよう。
店の中から聞こえてくるハンバーグのタネを勢いよく掌に叩きつけて空気を抜く小気味良い音に、少しだけ心が揺らぐけれど…ハンバーグはまた今度と自分に言い聞かせる。


いよいよ18時のオープンの時間を迎えると、お店のマダムが笑顔で迎えてくれた。
間口が狭く奥行きが深い鰻の寝床のような店内には、Iの字形のカウンターテーブルがひとつに椅子が8席あるきり。
ご夫婦二人で切り盛りする、小さな小さなお店だ。
開店までに並んでいたのは私を含め3組だったけれど、お店が開くやいなや常連さんとおぼしきお客さんたちがどんどん入ってきて、20分も経たないうちにたちまち満席になってしまった。
一人か二人で来ているお客さんばかりで、女性一人でもとても入りやすい雰囲気。

カウンターの中では黙々と調理をしているご主人の傍でマダムがてきぱきと給仕と接客をこなす。
私のあとに入ってきたお客さんのほとんどは常連さんらしく、マダムと世間話をしながらなにを注文するか決めている。
カウンターの中は狭いけれど整理整頓されていて清潔感がある。


カウンターの内側も外側も本当に必要最低限のものしか存在しない非常に簡素な空間ながら、気負わないおしゃれ感が漂っていて、いわゆる懐かしの「洋食屋」的な雰囲気とは一線を画している。
ベーシックなデザインの品々をセンス良く配置した店内にはシンプルな美しさがあって、老若男女問わず居心地よく過ごせる空間になっている。


今夜の私のオーダー内容は次の通り。

・瓶ビール(アサヒスーパードライ 小瓶)450円
・ニース風サラダ(ハーフ)370円
・かき玉子のミネストローネ340円
・ビーフカツレツ1300円
・ライス(S)150円


店内の黒板メニューには好物の田舎風お肉のパテなどもあり、思わず飛びついてしまいそうになったが…自分の胃の容量を考えて今夜は断念。
メニューによるとワインはグラス500円、デカンタ1900円、ボトル2700円とかなりリーズナブルに頂ける(ただし、種類は1種類のみの模様)ようだけど、カツにはビールの方が合うかと思い、この日はスーパードライの小瓶を注文。
ちなみにこのお店に置いてあるビールはアサヒスーパードライ、プレミアムモルツ、エビスの3銘柄で、いずれも小瓶オンリー。

注文するやいなや、すぐによく冷えたビールが出てくる。


日頃からビールはよく飲むし、瓶入りのコロナやバドワイザーなんかの海外のビールも割と飲むけれど、国産の瓶ビールを飲むのはとても久しぶりのような気がする(個人的に瓶入りのスーパードライや一番搾りは旅館や寿司屋で出てくる飲み物のイメージ)。
飲み慣れたアサヒスーパードライだけど、いつも飲んでいるものと味わいが違うように感じられるのは、やはり瓶入りだからだろうか。


注文してから5分ほどでニース風サラダが提供される。


このお店の人気メニューのひとつらしく、私以外のお客さんもほとんどが注文していた。
レタス、インゲン、ゆで卵、ツナ、アンチョビ、グリーンオリーブ、スライスした玉ねぎ、ゆでたジャガイモ、プチトマト…ドレッシングはフレンチドレッシング。
なにひとつとして過不足ない、正統派サラダ・ニーソワーズ。
プチトマトが湯むきしてあってドレッシングがよく滲みている。
こういうひと手間がとても嬉しい。
ハーフサイズでもかなり食べでがある。1人分なら十分な量。


サラダのあとに出されたかき玉子のミネストローネは、ざく切りのベーコンと野菜とかき玉子が入って具沢山。


トマトの味はしっかりとするけれど、酸味はとてもマイルド。
玉子を入れるアイディアは今度家でミネストローネを作る時に使わせて頂こう。
スープを飲んでいると、カウンターの内側奥の厨房から揚げ物を揚げるいい音と香ばしい匂いが漂ってきた。
本日のメインディッシュがそろそろやってくる頃だろうか…じわじわと期待が高まる。


そして、いよいよビーフカツレツの登場。


揚げたてほやほやで湯気が立っているカツは、食べやすく切り分けられている。
切り口は食欲をそそるピンク色。
(私としたことが、断面図を撮り忘れた…なんたる失態!)
少し焼き加減にムラがあるけれど、大方ミディアムレア程に火が通った牛肉を包み込む衣は、さくっさくの軽い口当たり。
デミグラスソースは酸味と苦味がほどよく効いていて味わい深い。
これはぜひ、このお店のハヤシライスやビーフシチューも食さなければ。
添えられたマスタードをソースと一緒にカツにつけて食べると、これがまたよく合う。
付け合わせの温野菜も彩りが綺麗でおいしい。
ああ、白いごはんが進む進む…






万人に受ける洋食の王道を行きながら、さりげない味付けや盛り付けのセンスの良さで一皿一皿を適度に(肩肘張らない程度に)垢抜けたものにしているあたり、このお店のバランス感覚は絶妙だと思う。
まるでお気に入りの普段使いの椅子のように、洗練されたシンプルさで飽きのこない料理が頂ける洋食屋さん…これは通ってしまいそう。

食べ終わって外に出ると、店の前には5〜6人ほどの入店待ちの列ができていた。


もう少しお店が広かったら(あまり待たずに食べられるし、もっとのんびり食事を楽しめるのになあ)…と思ってしまうけれど、きっと今ぐらいの大きさがご夫婦二人きりで切り盛りするにはちょうどいいのだろう。

お腹いっぱい食べて、ビールも飲んでお会計は2610円(税込)。
メイン料理+ライスのみの注文であれば、ディナータイムでも1500円前後におさまると思う。
ランチタイムにはメイン料理+スープ+ライス+コーヒー付きで1000円前後のお得なランチセットがあるらしいので、今度ぜひそちらも利用したい。

2014年7月28日月曜日

【家呑み】テーブルの上の情事

※今回の記事は外食の話題ではありません。あしからず。



日曜日の晩は、近所のTSUTAYAで借りてきた映画のDVDを見ながら久々に自宅で家呑み。

今夜の上映ラインナップは、
・『ペインテッド・ヴェール〜ある貴婦人の過ち〜』
・『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
・『バベットの晩餐会』
の3本。
(目についたものを手当たり次第に借りてきた、統一感皆無のラインナップ)

ちなみに鑑賞のお供は、
・焼き野菜のマリネ
・ラムチョップのスパイス焼き
それとワイン(泡1・赤1)にグリーンオリーブ。
暑い季節には無性にスパイスや酸味が効いたものが食べたくなる。



まず今宵の1本目の映画『ペインテッド・ヴェール〜ある貴婦人の過ち〜』(このサブタイトルは心底いかがなものかと思う)を再生し、景気づけにスパークリングワイン開けて料理を始める。
ナオミ・ワッツ、ブルネットも似合うなあ(この女優さんはリンチの『マルホランド・ドライブ』の金髪のイメージが強い)。

こうやって休日にお酒を飲みながらだらだら料理をするのがとても好き。
出来上がるのはいつも大体深夜。料理をしながらお酒を飲んでいる…というより、むしろお酒を飲む片手間に料理を作っていると言った方がいいと思う。
料理をするという行為自体が、私にとっては最高の酒の肴なのかもしれない。


今夜のスパークリングワインは、チリのSUNRISE。
雑味が少なくクリアな味わい。柑橘の風味と豊かな酸味が爽やか。泡立ちは細やかで弱め。
SUNRISEは今までにも何度か飲んだことはあったけれど、やっぱり美味しいなと改めて実感。
1000円ちょっとで買えるお手頃なものの中では出色のスパークリングではないかと。


焼き野菜のマリネは、焼き付けた野菜をオリーブオイルとバルサミコ酢と蜂蜜と醤油と少量のSUNRISEを混ぜて煮立てたマリネ液で和えただけの簡単メニュー。
バルサミコ酢と醤油の組み合わせってお互いを引き立て合ってとても好き。

ラムチョップのスパイス焼きはクミンやオレガノなど数種類のスパイスに漬け込んだラム肉をオーブンで焼いたもの。
すりおろしたライムの皮とキュッと絞った果汁で爽やかに。


ラムに合わせて赤ワインも開栓。 
Un Amour de Bordeaux 2010
ぎゅっと凝縮されたブラックカラントのような香り高いベリーの香りとキュンとする甘酸っぱさがある。タンニンが柔らかくて飲み口がマイルドなのはメルロー主体だからかな。後味はスパイシーだけど、とてもスイートな印象のワイン。
今晩のラムチョップとよく合って驚いた。クミンやらライムやらでエスニックな味つけにしたから合うかどうかちょっと不安だったけれど、スパイスの香りもライムの香りもきちんと受け止められるだけの包容力がある。
特にクミンとの相性がとてもいい。
「ボルドーの愛」の名前にふさわしく、エチケットには赤いハート。
ちょうどこれから見る『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』という映画はヴァンパイアの恋人たちが主役だし、我ながらなかなかのナイスチョイスではないかと自画自賛。

『オンリー・ラヴァーズ(以下略)』は退廃的で美しい映画だった。
隠者のようにこの世界の片隅に隠れ住み、あらゆる時代の美しいもの・知的なものと人の生き血を味わいながら、世紀を超えて愛し合うヴァンパイアの恋人たち。
ヴァンパイアカップルの片割れ、イヴ役のティルダ・ウィンストンが人間離れした高貴な魔性の美しさで、見ていて何度も震えが走った。
もう、肌や髪の質感からして人間のそれと同じものでできているようには思えない!
調べてみたら、彼女はなんと撮影当時すでに御年50歳を越えていたらしい。
ウィンストン自身がヴァンパイアなのではないかと疑ってしまう 笑

時間が経つにつれて飲んでいたワインの中にほんのり血のような鉄っぽい風味が出てきたように感じられたのは、この映画の中にワイングラスに入った血を主人公たちが美味しそうに飲み干すシーンが度々あったからかもしれない。
特にどこもかしこも真っ白なイヴが、唇と歯を真っ赤に染めて血の味に恍惚とするシーンは本当におぞましく、美しい。



1、2本目と食欲を減退させる映画(『ペインテッド・ヴェール』は伝染病が大流行中の中国の奥地が主な舞台、『オンリー・ラヴァーズ(以下略)』の食事シーンは基本的に血みどろ)が続いたけれど、3本目の『バベットの晩餐会』はうって変わって激しい空腹感を催す映画だった。

前半は主人公のバベットが住み込みで家政婦をしている牧師一家の敬虔な姉妹のエピソードが続いて正直少々退屈(姉妹が好んで口にする、あの黒パンをビールで煮ただけのどろりとした茶色い泥のようなパン粥のまずそうなこと!)だったけれど、バベットが料理人としての本領を発揮する後半は画面に噛り付いて見た。
デンマーク・ユトランド半島の寒村に暮らす粗食のキリスト教徒たちの舌を唸らす、贅の限りを尽くしたフランス料理とワインのフルコースの見事なこと…!
食前酒のアモンティリャード(シェリー)に、「なんという味!」と将軍が絶賛した海亀のスープに、ヴーヴ・クリコ(シャンパン)のグラン・ダネに、キャビアとサワークリームがたっぷりのったブリヌイに、飲めば禁欲的なクリスチャンの老婦人も思わずにっこり笑顔になってしまうルビーのように輝くクロ・ヴージョ(ブルゴーニュの赤ワイン)に、バベットのスペシャリテである鶉のフォアグラ詰め石棺風に…めくるめく晩餐に、萎えかけていた食欲が再びムクムクと頭をもたげてきたのは言うまでもない。



この映画の中でバベットは「食事を恋愛に変えることが出来る女性」と称され、その料理の才を讃えられている。
彼女をそう評した人物は、また、このようにも述べている。
「情事と化した食事においては、精神的欲求と肉体的欲求の区別がつかない。」


そんな素晴らしい情事を、私は生きている間に一体あと何回味わえるだろうか。
寝酒にワインをちびちび舐めつつ、映画の余韻に浸りながら眠りに落ちた。