2014年7月28日月曜日

【家呑み】テーブルの上の情事

※今回の記事は外食の話題ではありません。あしからず。



日曜日の晩は、近所のTSUTAYAで借りてきた映画のDVDを見ながら久々に自宅で家呑み。

今夜の上映ラインナップは、
・『ペインテッド・ヴェール〜ある貴婦人の過ち〜』
・『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
・『バベットの晩餐会』
の3本。
(目についたものを手当たり次第に借りてきた、統一感皆無のラインナップ)

ちなみに鑑賞のお供は、
・焼き野菜のマリネ
・ラムチョップのスパイス焼き
それとワイン(泡1・赤1)にグリーンオリーブ。
暑い季節には無性にスパイスや酸味が効いたものが食べたくなる。



まず今宵の1本目の映画『ペインテッド・ヴェール〜ある貴婦人の過ち〜』(このサブタイトルは心底いかがなものかと思う)を再生し、景気づけにスパークリングワイン開けて料理を始める。
ナオミ・ワッツ、ブルネットも似合うなあ(この女優さんはリンチの『マルホランド・ドライブ』の金髪のイメージが強い)。

こうやって休日にお酒を飲みながらだらだら料理をするのがとても好き。
出来上がるのはいつも大体深夜。料理をしながらお酒を飲んでいる…というより、むしろお酒を飲む片手間に料理を作っていると言った方がいいと思う。
料理をするという行為自体が、私にとっては最高の酒の肴なのかもしれない。


今夜のスパークリングワインは、チリのSUNRISE。
雑味が少なくクリアな味わい。柑橘の風味と豊かな酸味が爽やか。泡立ちは細やかで弱め。
SUNRISEは今までにも何度か飲んだことはあったけれど、やっぱり美味しいなと改めて実感。
1000円ちょっとで買えるお手頃なものの中では出色のスパークリングではないかと。


焼き野菜のマリネは、焼き付けた野菜をオリーブオイルとバルサミコ酢と蜂蜜と醤油と少量のSUNRISEを混ぜて煮立てたマリネ液で和えただけの簡単メニュー。
バルサミコ酢と醤油の組み合わせってお互いを引き立て合ってとても好き。

ラムチョップのスパイス焼きはクミンやオレガノなど数種類のスパイスに漬け込んだラム肉をオーブンで焼いたもの。
すりおろしたライムの皮とキュッと絞った果汁で爽やかに。


ラムに合わせて赤ワインも開栓。 
Un Amour de Bordeaux 2010
ぎゅっと凝縮されたブラックカラントのような香り高いベリーの香りとキュンとする甘酸っぱさがある。タンニンが柔らかくて飲み口がマイルドなのはメルロー主体だからかな。後味はスパイシーだけど、とてもスイートな印象のワイン。
今晩のラムチョップとよく合って驚いた。クミンやらライムやらでエスニックな味つけにしたから合うかどうかちょっと不安だったけれど、スパイスの香りもライムの香りもきちんと受け止められるだけの包容力がある。
特にクミンとの相性がとてもいい。
「ボルドーの愛」の名前にふさわしく、エチケットには赤いハート。
ちょうどこれから見る『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』という映画はヴァンパイアの恋人たちが主役だし、我ながらなかなかのナイスチョイスではないかと自画自賛。

『オンリー・ラヴァーズ(以下略)』は退廃的で美しい映画だった。
隠者のようにこの世界の片隅に隠れ住み、あらゆる時代の美しいもの・知的なものと人の生き血を味わいながら、世紀を超えて愛し合うヴァンパイアの恋人たち。
ヴァンパイアカップルの片割れ、イヴ役のティルダ・ウィンストンが人間離れした高貴な魔性の美しさで、見ていて何度も震えが走った。
もう、肌や髪の質感からして人間のそれと同じものでできているようには思えない!
調べてみたら、彼女はなんと撮影当時すでに御年50歳を越えていたらしい。
ウィンストン自身がヴァンパイアなのではないかと疑ってしまう 笑

時間が経つにつれて飲んでいたワインの中にほんのり血のような鉄っぽい風味が出てきたように感じられたのは、この映画の中にワイングラスに入った血を主人公たちが美味しそうに飲み干すシーンが度々あったからかもしれない。
特にどこもかしこも真っ白なイヴが、唇と歯を真っ赤に染めて血の味に恍惚とするシーンは本当におぞましく、美しい。



1、2本目と食欲を減退させる映画(『ペインテッド・ヴェール』は伝染病が大流行中の中国の奥地が主な舞台、『オンリー・ラヴァーズ(以下略)』の食事シーンは基本的に血みどろ)が続いたけれど、3本目の『バベットの晩餐会』はうって変わって激しい空腹感を催す映画だった。

前半は主人公のバベットが住み込みで家政婦をしている牧師一家の敬虔な姉妹のエピソードが続いて正直少々退屈(姉妹が好んで口にする、あの黒パンをビールで煮ただけのどろりとした茶色い泥のようなパン粥のまずそうなこと!)だったけれど、バベットが料理人としての本領を発揮する後半は画面に噛り付いて見た。
デンマーク・ユトランド半島の寒村に暮らす粗食のキリスト教徒たちの舌を唸らす、贅の限りを尽くしたフランス料理とワインのフルコースの見事なこと…!
食前酒のアモンティリャード(シェリー)に、「なんという味!」と将軍が絶賛した海亀のスープに、ヴーヴ・クリコ(シャンパン)のグラン・ダネに、キャビアとサワークリームがたっぷりのったブリヌイに、飲めば禁欲的なクリスチャンの老婦人も思わずにっこり笑顔になってしまうルビーのように輝くクロ・ヴージョ(ブルゴーニュの赤ワイン)に、バベットのスペシャリテである鶉のフォアグラ詰め石棺風に…めくるめく晩餐に、萎えかけていた食欲が再びムクムクと頭をもたげてきたのは言うまでもない。



この映画の中でバベットは「食事を恋愛に変えることが出来る女性」と称され、その料理の才を讃えられている。
彼女をそう評した人物は、また、このようにも述べている。
「情事と化した食事においては、精神的欲求と肉体的欲求の区別がつかない。」


そんな素晴らしい情事を、私は生きている間に一体あと何回味わえるだろうか。
寝酒にワインをちびちび舐めつつ、映画の余韻に浸りながら眠りに落ちた。


2014年7月21日月曜日

【食べ歩きレポート】トラットリア タンタボッカ(北参道)

起き抜けに思わず「しまった!」と叫んだ土曜日の昼過ぎ。

前日から今日は絶対どこかに美味しいランチを食べに行こうと決めていたのに、目が覚めたらすでに13時近くになっていた。
ああ、なんということ。
渋谷のフレンチレストラン decoに当たりを付けていたのだけど、支度を終えて出かけると、あちらに着く頃にはランチタイムのラストオーダーの14時を過ぎてしまう。

仕方がないので今日のところはdecoは諦め、14時以降に入店可能な都内(世田谷~山手線の左半分のエリア)の美味しいランチスポットを探す。
しかし、人気店だとランチタイムは14時頃までにオーダーストップしてしまうところが多いので、お店探しはなかなか難航。
しばらくiPhoneと睨めっこして、食べログで見つけた北参道にあるイタリア料理のお店、トラットリア タンタボッカ(Tanta Bocca)に行ってみることにする。
このお店のランチタイムのL.O.は14時半なので、ギリギリ滑り込めるはず…!
なんでもお肉(特に牛肉)が売りのイタリアンらしく、ここのところ美味しいお肉に飢えていた私はがっしりと心を鷲掴まれた。
ディナーではA5和牛なども頂けるらしい。



お店は北参道駅の1番出口を出て、明治通りを右に進むと道の左側にすぐに見えてくる。


通りに面しているピンクがかった卵色の壁には、オリーブの木の絵とtrattoria Tanta Boccaの文字が。


赤と白のストライプ柄の屋根が目を引くので、非常にわかりやすい。


中に入ると、火が入ったトマトや香味野菜のいい匂い…!
思わず顔がほころんでしまう幸せの匂いだ。
店内の雰囲気は、オステリアやタヴェルナよりはよそ行き、かといってリストランテほど肩肘張る必要もなく…いい意味でTHE・トラットリア(大衆向けのレストラン)という感じ。
黄色、オレンジ、赤など全体的に暖色でまとめられた店内は、とても温かくて親しみやすい。
外壁と同じ赤みがかった卵色の壁に飾られた絵付けタイルの原色の彩りが鮮やか。
窓際にはガラス張りのサンルームのような席があって、晴れた日には気持ちよく過ごせそう。
店内には適度な喧騒と活気がある。
若い店員さんたちも威勢が良くて、とにかく元気元気。飛び交うイタリア語も耳に心地良い。
なんだかこの空間にいるだけで気持ちが明るくなりそう。
やっぱり、トラットリアはこうでなくっちゃね。

私が入ったのは14時過ぎだったけれど、その時点でも店内はほぼ満席。さすがは人気店。
予約はしていなかったけれど、運良く2人掛けのテーブルがひとつ空いていたのでそこに通される。
客層は家族連れにカップルに友人同士に…実に多様。
一人で来ているのは私くらいだろうか、確かに親しい人とわいわい賑やかにテーブルを囲むのがいかにもふさわしいお店だ。
でも、一人でも決して居心地は悪くない。席と席の間隔が適度に離れていてなかなか寛げる。

テーブルの上にはお冷が水の入ったボトルごと置かれていて、こんな暑い日には嬉しい。
ランチメニューは1030円(前菜+パスタ)のセットから3600円のシェフおまかせコースまで何種類かの設定がある。


今回私がオーダーしたのはこちら⬇︎

ランチコース (2060円)

・前菜
・パン(おかわり自由)
・パスタ
・メイン(肉か魚か選択)
・デザート
・食後のコーヒー

パスタは5種類から選べる(全て希望すれば生パスタに変更可能)。ワタリガニのトマトソースやら魚醤とレモンやら…どれも美味しそうで散々迷った挙句、和牛ミートソースのスパゲティに決める。
メインは肉料理(本日は豚ロースのスカロッピーネレモンバターソース)をチョイス。
お肉がイチオシのお店ということなので、肉尽くしでいくことにする。

おや。
ランチメニュー裏面のドリンクメニューを見ると、グラスワインがなんと420円!


赤でも白でも泡でも420円…と聞いたら、まずはとりあえず泡を頼むしかない 笑
料理と一緒にグラススパークリングワインも注文。

ワインはすぐに運ばれてきた。
フレッシュな杏のようなジューシーな甘酸っぱさとピリリとしたドライな辛さが同居する、夏に似合うスパークリング。


晴れた日に太陽の下で飲んだら、きっと更に美味しく感じられるんだろうな。

ワインとほぼ同時に出された丸いパンはほっこり温かく、噛みしめると香ばしい全粒粉の味わいをしっかりと感じられる。
おかわり自由なのが嬉しい。
素朴で飽きのこない美味しさで、うちに買って帰りたいと思ったくらい。


添えられていたクリーム状のバターは燻製になっていて、すごく香りがいい。
パンにユニークなバターを添えて出すお店はたくさんあるけれど、燻製バターというのは初めて。面白い。


そして、畳み掛けるように前菜が登場(このお店のサーブはとにかくスピーディー 笑)。


「前菜のバーニャカウダです」


???





バーニャカウ、ダ……?

目の前に出された一品は、少なくとも私が知っているバーニャカウダとは違う料理だ。
どっかりと盛り付けられた大きなくし切りの野菜たちは、まるでこれから調理するためにとりあえずお皿に並べられた材料のような…(失礼)
野菜の下に敷かれた薄茶色のソースらしきものはバーニャカウダソースだろうか。
ナイフで切り分けて口に運んでみると、野菜がどれも甘い。
キャベツ・ナス・カボチャなんかは蒸してあるようで、とても甘みが濃い。
アンチョビとニンニクが効いた塩気の濃いバーニャカウダソースをつけて食べるとちょうどいい。


続いて、えもいわれぬ良い香りとともに熱々の和牛ミートソースのスパゲティが運ばれてきた。


ミートソースには指先ほどの大きさの牛肉の塊がゴロゴロ入っていて、噛みごたえがある。
牛の赤身肉の味わいと凝縮されたトマトの味と香味野菜の旨味が詰まったミートソースは、もちもちの生パスタによく絡む。
うん、これは美味しい。
セットメニューのパスタだからといって少ないということはなく、分量はちょうど良かったけれど、これなら+210円で大盛りにしてもらってもよかったかもしれない。

スパゲティと一緒に注文したグラス赤ワインは適度な凝縮感と渋みがあり、胡椒やユーカリのようなスパイシーな香りのあるワイン。ミートソースの牛肉の香りにマッチする。


本日の肉料理は豚ロースのスカロッピーネ。


薄切りのロース肉をレモンバターソースでさっぱりと頂く。レモンの香りと酸味が効いたソースだけど、決して刺々しくない。
たっぷり添えられたホウレン草のソテーをこのソースに浸して食べると、とても美味しい。
お肉が売りのお店にしてはいささか肉肉しさに欠ける肉料理のような気がしないでもないけれど、爽やかで夏らしい一品だと思う。


デザートのオレンジソースがかかったマンゴームースはいまいち。
某ファミレスで見かけるような絵皿の上に、これでもか!というぐらいでーんとムースが乗っていて、とにかく量が多い(写真では実物の大きさが伝わらないのが残念!)。


美味しくないというわけではないけれど、クリーミーでいささか単調な味なのでこれ単品ではすぐに食べ飽きてしまう。
これなら出された量の1/3も食べれば十分かな…
デザートと一緒に飲んだコーヒーは、香ばしさが立っていて美味しかった。 




今回頂いたランチコースは一皿一皿ボリュームがあり、食べ終わる頃には満腹で少し苦しいくらいだった(特に最後のムースが効いた )。
これで2060円とはかなりのCPの高さ。

というわけで、とても楽しい休日ランチ(ブランチ)だった。
…が、お店の方のサービスに関してはちょっと不満が残る。
ランチタイムも終わりの頃だったので、店員さんたちは徐々にディナータイムの準備を始めていたのだけど…まだ食事をしている人がすぐ側にいるところで、ばっさばさと何枚もテーブルクロスを広げるのはいかがなものかと。埃が舞ってしまう。

気取らないフレンドリーなサービスは素敵だけど、そういった「カジュアルさ」というのは「雑さ」と紙一重だと思う。
その点、少々残念だった。



次に来る時は、是非よく晴れた日に時間に余裕をもって気の置けない友人たちと一緒に訪れたい。






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トラットリア タンタボッカイタリアン / 北参道駅代々木駅千駄ケ谷駅
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2014年7月16日水曜日

【食べ歩きレポート】クンバ ドゥ ファラフェル(神泉)

火曜日の晩、東大駒場図書館で調べ物をした帰りに、神泉のクンバ ドゥ ファラフェル(Kuumba du Falafel)というファラフェルのお店で夕食を食べてきた。

(ファラフェルというのは中東の料理で、ひよこ豆のペーストにスパイスを加え団子状にして揚げたコロッケのような揚げ物のこと。また、それを生野菜と一緒に中に挟んだピタサンドのこともファラフェルというらしい)

私が初めてファラフェルを口にしたのは、数年前の夏、パリに短期留学していた時のことだった。
マレ地区のユダヤ人街の行列のできる店で買ったファラフェルのピタサンドは、熱々のスパイシーなファラフェルがゴロゴロ入っていて美味しかったけれど、一玉分まるまる入っているんじゃないかというぐらい、中にたっっっぷりと挟み込まれた刻み紫キャベツの海の中で歯が溺れてしまいそうなほど、恐ろしくボリューミーだった。
食べ終えた時にものすごい達成感を感じたのを今でもよく覚えている。


日本にも美味しいファラフェルを食べられる店があると聞き、近くまで行く用事があったら絶対に立ち寄ろうと思っていた。念願の初訪問。
クンバ ドゥ ファラフェルは松濤二丁目の交差点から松見坂方面に山手通りを少し進んだところにある。ガラス張りの外装から覗く、まるでデザイン事務所かバーかなにかのようなスタイリッシュな店内…中東料理のお店らしい感じは微塵もしないし、看板らしきものも見当たらない。
しかし、地図によるとどうやらここに間違いない。

(写真は店仕舞い後)

少し躊躇ったが意を決してお店の中に入ると、ふんわりとスパイスのいい香りが漂ってくる。
よかった、どうやらここで合っているみたいだ。
「いらっしゃい」と出迎えてくれた店員さんは、いかにもおしゃれなカフェの店員さんといった雰囲気の若い日本人男性。レジ下のショーケースの中には、「水のドンペリ」と名高いシャテルドンの瓶。
ますます「ファラフェルの店」のイメージから遠ざかっていく…笑

このお店のメニューは全てヴィーガン(完全植物性)ということで、肉や魚を使ったものは一切無い。
看板メニューであるファラフェルサンドは、ハーフサイズ(880円)とレギュラーサイズ(1200円)と自分で具材を挟んで食べるタイプのプレート(1580円)があり、今回はプレートを注文。
ドリンクメニューにはパレスチナやチュニジアのビールなど珍しいアルコール類もあったけれど、今夜は課題をやらなくてはならないので泣く泣く断念。代わりに冷たいミントティー(500円)を頼む。

お茶と料理を待つ間、お冷(水道水そのままでちょっと残念)を飲みながらお店の中を見回す。
先ほどから再三述べているように、このお店の内装には不思議なほどエスニック料理店らしい雰囲気がない。
カウンターテーブルの上に並んだ、干したデーツやクルミのなどの詰まった大きなガラスポットがささやかな異国情緒を添えている…と言えなくもないが、あったとしてもそれぐらいじゃないだろうか。


もっと言うと、この店の座席の配置も不思議だ。
そこそこスペースはあるのに、店内には7人ほどが座れるへの字型のカウンターが置いてあるだけ(座る方としてはのびのびできて快適だけど)。あえて席数は少なくしているのだろうか。

看板も出していないし、店内に2人いる店員さんはお世辞にも愛想がいいとは言えないし、でもお店の内装やメニューには一つ一つ相当なこだわりが伺えるし……
なんだろう、この自由さというか、「好きなものを好きなように売っているだけ」感。
素敵じゃないか。


ほどなくしてミントティーが出てきた。


注文したのは間違いなくミントティーのはずだけど、グラスに顔を近付けると、まず鼻腔に飛び込んでくるのは強烈なシナモンの香り。ミントの香りは打ち消されてしまっているのか、殆ど感じられない。
味もやっぱりシナモンが勝ってしまっている。甘さはほどほどで飲みやすい(モロッコティーのようなあまあいミントティーを想像していると、若干肩透かしを喰らう 笑)。
シナモンフレーバーのお茶としては美味しいので、途中からはこれはシナモンティーだと思って飲んでいた。


オーダーから20分程経って、ファラフェルプレートが運ばれてきた。
スパイスと揚げ物の香ばしい香りとともに登場したプレートを見て、思わず絶句。







森だ。
テーブルの上に、突如カラフルな森が出現した。


ピタパンに挟み込むほかの具材と一緒にお皿の上にこんもりと盛り付けられた、色とりどりの美しい葉物野菜たち。それにしても驚きの野菜量だ。他の具材が葉っぱの下に隠れてしまっている。
…さて、圧倒されている場合ではない。サンドイッチを作らなければ。
山のような葉物野菜を、森の中から発掘したバラエティ豊かな具材とともに無我夢中でピタパンに挟み込んでいく。ピタは二枚ついてくるので、一つのプレートから二つのサンドイッチができる。
ピタのキャパシティが存外大きかったのをいいことに、挟んでも挟んでも減らない葉っぱ群をこれでもかと言わんばかりに押し込む。
実際に口に運ぶ時のことを全く考えずに作り上げたマイファラフェルは、案の定、顎を破壊しかねない凶悪な代物になった。


作りようによっては美しい花束のようなサンドにもなり得ただろうに…実に残念な仕上がりになってしまった。
店内に他のお客さんがいない(店員さんたちも基本的に厨房にいる)のをいいことに、レタスが目や鼻に直撃しそうになるのを避けながら、大口を開けて思いっきりかぶりつく。
美味しい!!!
カラッと揚がったザクザクほくほくのスパイシーなファラフェル、目にも鮮やかなみずみずしい葉物野菜(中には青紫蘇も入っていた。清涼感がいいアクセントになっている)、ダイス状のシャキシャキのキュウリにトマト、濃厚なバジルのペースト、クミンが香るクリーミーなフムス(ひよこ豆のペースト)、酸味が爽やかな紫キャベツのマリネ、油で揚げたカリッカリの薄切りの茄子、まろやかでコクがあるソース(白ゴマ?ヨーグルト?何でできているのか気になる)、もちもちの香ばしいピタパン…さまざまな味わいや食感が重なった、複雑で奥深い美味しさのハーモニー。
一口ごとに味が変わっていくので、かなりのボリュームにもかかわらず飽きがこない。
別添えの赤唐辛子のソースをかけて辛味を足してもまた美味しい。


ランチタイムにはハーフサイズのファラフェルサンドにレンズ豆のスープがついて1000円のセットメニューがあるそうなので、今度は是非そちらも味わってみたい。
ファラフェルサンド単品ならテイクアウトも可能なので、過ごしやすい季節には青空の下でかぶりつくのもいいだろう。なんて健康的で美しいランチ!



パリで食べたファラフェルはジャンクフード的な色合いの濃いものだったけれど、このお店のファラフェルはあくまでも洗練されたマクロビ食だ(食べ方は少々ワイルドにならざるを得ないが)。
それにしても、肉も魚もない食事でここまでの満足感を味わえるなんて…!


野菜の森に顔を埋めたくなったらまた来よう。








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クンバ ドゥ ファラフェル西アジア料理(その他) / 神泉駅駒場東大前駅池尻大橋駅
夜総合点★★★★ 4.0

2014年7月13日日曜日

【食べ歩きレポート】GLOBE CAFE(三宿)

気怠い日曜日の朝。
昨夜は仏文の先生方と院生で夜中まで飲んだあと、そのまま三軒茶屋にお住まいの大学美術部の某先輩のお宅で(TVでW杯観戦などしつつ)明け方までお部屋の改装のお手伝いをしていた。
先輩宅で仮眠をとって目覚めると、もうすっかり陽が高くなっている。


昨夜の遊び疲れと眠気で身体はフラフラだけど、せっかく休日の三茶にいるのだから、散歩がてらどこかでブランチをして帰ろう。
ごはんを食べるのでもお酒を飲むのでも、この辺りはとにかくいいお店に事欠かない。
選択肢が多すぎてどこにしようか迷ってしまうけれど…今日は久しぶりに、先輩とインテリアのお話をしていて話題に出た三宿のGLOBE CAFEに行こう。


GLOBE CAFEは三軒茶屋と池尻大橋のほぼ中間地点に位置する三宿交差点のすぐ側にある、THE GLOBEというとても素敵なアンティーク家具のお店の中に併設されているカフェ。


3階建てのTHE GLOBEの店内にはイギリスのアンティーク家具や雑貨が所狭しと並べられていて、アンティーク好きにはたまらない空間。
お店の1階部分を利用したカフェでは、なんと売り物のテーブルセットに座ってお茶や食事をいただくことができる(もちろん、テーブルにも椅子にもよく見るとみんな値札がついている 笑)。
素敵な家具屋さんを見ていると、「いいなあ、ここに住みたいなあ…」なんてことをよく思うけれど、ここGLOBE CAFEはそんな願望をちょっとだけ叶えてくれるお店。
店内は写真撮影禁止(カフェのテーブルの上のみ撮影可)なので、自分の拙い言葉でしかこの眺めをお伝えことができないのが残念!
アンティーク家具がお好きな方には、ぜひ一度訪れていただきたい。
特に1階の高い天井から下がる無数のアンティークのシャンデリア群と、お店の入口正面の巨大なサーカスの白馬のオブジェと、その背後にある洋書が詰まった大きな青い本棚は圧巻。この一角だけ、まるで幻想的な図書館のよう。
天井まで届く本棚って、どうして見ているだけでこんなにワクワクしてくるんだろう。


アンティークショップを一頻り見て回ったあと、1階のカフェへ。
今日は1人だったので、壁際の2人掛けの小さなテーブル席に座る(3人以上なら、売場の中央にあるどっしりとた豪華なダイニングテーブルの席がおすすめ)。
席から店内を見回すと、以前来店した時にはあったテーブルセットがなくなっている。きっとどこかのお宅にお嫁入りしてしまったのだろう。
ほどなくして出されたお冷には、ほんのりオレンジの風味があって爽やか。
皮のカバーがついたクラフト感溢れるメニューリストがかわいらしい。


このお店、インテリアショップのカフェコーナーと思って侮ってはいけない。ドリンクメニューは充実しているし、スイーツなんかも結構種類があり(店内の大きなガラスケースに並べられたケーキたちの美味しそうなこと!)、きちんとカフェとして使えるお店になっている。
食事メニューはたくさんの具材がゴロゴロ入ったサラダやキッシュ、カレーなどいわゆるカフェ飯的なラインナップ。
しかし、ローストビーフやシェパーズパイなどイギリスの香りがするメニューもあり、この内装もあいまって、ほんの少しだけ英国の紳士淑女の社交場であるクラブに併設されたレストランで軽食を取っているような気分を味わうことができる。
以前ここで食べて美味しかったローストビーフをランチセット(ドリンク・パン・サラダつきで1400円)で注文しようかと思ったら、セットは平日限定メニューとのこと。
日曜日の今日はアラカルトオンリーなので、ローストビーフ(1200円)とライス(200円)と赤ワイン(600円)をグラスで注文。


まずは赤ワインを頂く。休日の真っ昼間から飲むお酒の美味しいこと…!笑
こちらのハウスワインはイタリアワインらしい(詳細は不明)。凝縮感が強くボリューミーでふくよかな甘みがありつつも、ピリッとドライ。とても親しみやすい、合わせる食事を選ばないワイン。
GLOBE CAFEで扱っているワインは(赤白それぞれ)ハウスワインと、あとボトルのみで注文できるものが1種類の計2種類ずつ。グラスでいただけるのはハウスワインのみ。デキャンタでも注文できる。


オーダーから15分ほどでローストビーフが出てくる。


おや。この褪せたローズピンクの肉色、ちょっと火が通りすぎのような…?
熱々のグレイビーソースとたっぷりと添えられたマッシュポテトは嬉しい。
ソースはかなり甘口。これは炒めた玉ねぎの甘さだろうか。
お肉は脂が少なめで赤身の味が濃い、いかにも外国産の牛肉という感じの味がする。上に乗ったピンクペッパーが味を引き締めるいいアクセントになっている。
しかし、案の定よく焼けすぎていて硬い。
以前にいただいた時は、もっともっと柔らかくてジューシーなローストビーフだったのだけど…これは残念。




料理には不満が残るけれど、アンティークに囲まれたこの素敵な空間で過ごすことのできる時間は何物にも代え難い。
THE GLOBEのアンティークを見に来た時には、またお茶でも飲みに立ち寄らせてもらおう。






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グローブ・カフェカフェ / 三軒茶屋駅池尻大橋駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2014年7月11日金曜日

【食べ歩きレポート】ティ・ロランド(松濤)

金曜の午後、台風一過の猛暑の中。
ネイルサロンからの帰り道、私は微妙な空腹感を抱えて灼熱の渋谷の街をさまよっていた。
朝ごはんは食べてきたけれど、サロンの施術がちょうどランチタイムにかかったので、昼ごはんを食べ逃してしまった。死ぬほど空腹というわけではない。が、なにか食べたい。
しかし、晩に食事の約束があるので、こんな中途半端な時間にあまりお腹いっぱい食べるわけにもいかない。
かといって、何も食べなければ、この暑さの中を無事に生き延びて晩の待ち合わせ場所まで辿り着ける気がしない。
カフェでお茶でもするか…でも、ケーキのような甘いものを口にしたい気分でもない。身体は塩分を求めている。




こんな時は…
そうだ、ガレットを食べよう。


ガレットなら、あまりお腹にたまり過ぎず、適度にこの空腹を満たしてくれることだろう。
それに、ガレットのお店ならだいたいどこにでも同じブルターニュ名物のシードルが置いてある。こんな暑い午後に、キンキンに冷えた辛口のシードルはさぞかし美味しいに違いない…素敵だ。


某グルメ情報サイトで渋谷近辺でガレットを食べられるお店を探し、松濤のTi ROLANDE(ティ・ロランド)というお店に目星をつける。
なんでもここは、ブルターニュ最古のクレープリーであるTi JOSという店のオーナーがオープンしたクレープリーなのだとか。
ちなみにTi ROLANDEというのはブルターニュ語で「ロランドさんの家」という意味(ブルターニュ語のtiというのはフランス語のchezにあたる)らしい。

立ち並ぶ素敵な邸宅ウォッチングをしつつ松濤の住宅街を歩いていると、バターたっぷりのお菓子を焼いているような甘くて香ばしい匂いが漂ってきて、目的地が近いことを教えてくれる。
目指すお店は東急本店通り沿いにあるローソンの道路を挟んだはす向かいにあるビルの1階にあった。入口のドアの横ではためく大きなトリコロールの旗が目印。


このお店のすぐお向かいには、こちらもガレットの有名店であるガレットリアが。
競合店同士なのに、いくらなんでも近過ぎやしないか…と勝手にいらぬ心配をしてしまう。
蔦の絡まる外壁が人目を引くTHE・フレンチカントリーな雰囲気のガレットリアに比べ、こちらはいたって現代的かつシンプルで対照的な佇まい。


店内は白黒でまとめられていて、モダンでスタイリッシュな雰囲気。
ガレット屋さんというと、女の子向けの雑貨店のようないかにもかわいらしい内装のお店が多いイメージなので、ちょっと新鮮。
メニューは食事になる蕎麦粉のガレットと小麦粉を使った甘いデザートクレープが数種類ずつ、あとはドリンクのみ。さすがはクレープリー、色々な種類のクレープがあって目移りしてしまう。
ランチタイムは15時で終わってしまっていたけれど、15時から17時まではティータイム限定のドリンクセットの設定があったので、店の定番メニューらしいガレット・コンプレットを梨のシードルとセット(1500円)で注文。
ガレット単品でも1500円なので、このセットはお得(そもそもこのガレット単体での料金自体が適正か否か、という点については大いに疑問の余地があるとは思うけれど…笑)。セットのドリンクに追加料金なしでお酒を選べるところも嬉しい。

待つほどもなく、セットドリンクの梨のシードルが運ばれてきた。


林檎のシードルは好きでたまに飲むけれど、梨のシードルというのは初めてだ。シードルが入ったカップがテーブルに置かれた途端、フルーティーな良い香りが漂い始めた。
冷たいシードルがシュワシュワと喉をすべり落ちていく。ああ、生き返る…
飲み口はドライだけど、酸味に丸みがあってとてもまろやかな味わい。香りも良くとても飲みやすいシードルだけれど、すっぱいシードルがお好みの方にはちょっとぼんやりとした味のように感じられるかもしれない。舌の上に残るわずかな苦みは、梨の皮のよるものだろうか。

ガレットは注文を受けてからカウンターの中の厨房で焼いてくれる。店内に広がる焦げたバターの香りが食欲をそそるそそる…!
注文してから10分ほどで出てきた(早い!)。できたて熱々のガレットからはもくもくと湯気が立ち昇っていて、いかにも美味しそう。


生地は適度に厚みと弾力がありもっちりとしていて、噛みしめる毎に香ばしい蕎麦の香りが鼻に抜ける。
上に半熟の目玉焼きが乗ったクレープ生地の中にはグリュイエールチーズとハムが折り込まれていて、見た目よりも食べ応えがある。ナイフを入れるたびに切り口からチーズがとろーり…これは温かいうちに食べなければ!と食べ進めているうちに、たちまち完食。
見た目とは裏腹に、かなりお腹がいっぱいになった。美味しかったけれど途中で少し胸やけがしそうになり、野菜が欲しくなる。レタスの一枚でも添えられていたら…なんて思ったが、ランチセットにはサラダもついてくるらしい。
機会があれば、次はランチタイムに再訪してみたい。






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クレープリー ティ・ロランドフレンチ / 神泉駅渋谷駅駒場東大前駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2014年7月9日水曜日

【食べ歩きレポート】オー・シザーブル(六本木)

午前中の授業のあと、夕方まで時間があったので、今日の午後はどこかでランチをした後でバレエ・リュス展を観に行くことにした。

バレエ・リュス展の会場は国立新美術館なので、ランチは六本木近辺のお店にしようと思い、どこにしようかと暫く迷った末…以前から行ってみたいと思っていた、オー・シザーブルという老舗のフレンチレストランに決定。
Aux Six Arbres=「六本木で」という意味の小粋な店名が素敵!



ミッドタウンにほど近い細い路地を歩いていると、いい意味で六本木らしからぬ閑静な雰囲気の一角が出現。


あった。壁面に大きく「AUX SIX ARBRES」の文字。
ヨーロピアン調のシックな佇まい、丁寧に世話をされている青々とした店先の植木…高級感がありながら気負い過ぎない、通りがかりに「あ、入ってみたいな」と思わせる店構え。
これは美味しいものが頂けそう!


ドアを開けると、小柄で品の良いマダムが迎えてくれた。
店内はとことん正統派クラシカルな内装でまとめられている。
磨き上げられ鈍い輝きを放つフローリングの床、シミひとつないテーブルクロスは純白、艶やかなダークブラウンの木製の椅子は真紅のビロード張り。店内に流れる音楽はもちろんクラシック。
そこに佇む柔和な笑みを浮かべた物腰の上品なお店の名物マダム……とくれば、もう、どこからどう見ても完璧な懐かしの仏蘭西料理店(※あえての漢字表記)スタイルの完成だ。
席数は少なくこじんまりとしていて、アットホームな雰囲気。
かといって、その手のお店にありがちな「隙」(店員さんの私物が見えるところに置いてあるとか、電気コードの配線が丸見えとか。時にはそれがいい味をだしていることもあるけれど)のようなものは感じられない。
隅々まで手入れの行き届いた、妥協のない飲食空間づくりへのお店のこだわりを感じる。
常にさりげなく店内のいたるところに目を配るマダムの視線に、思わず背筋が伸びる。


今回私が注文したのは、CPが高いと評判の1600円のランチメニュー(本日の前菜、本日のスープ、メインの仔羊の肩肉のスパイシー煮込み、パン、デザート)。
真っ昼間だけど、もちろんワインも一緒にオーダー(本日のグラスワイン 1100円。フレンチのお店に来てワインを頼まないなんて、そんな重罪を犯せるわけがない 笑)。
赤ワインをグラスで注文したら、ギャルソンが2本のボトルを持ってきてそれぞれのワインの説明をしてくれて、どちらか好きな方を選べるとのこと。
ランチタイムから複数の銘柄のグラスワインが楽しめるのは嬉しい。
本日の赤はボルドーとコート・デュ・ローヌの2択だったので、メインの仔羊の煮込みのスパイスに合いそうなコート・デュ・ローヌを頼む。


かなり冷えた状態でサーヴされたワインからは、干し柿や干し杏のような香りと暑い国のスパイスのようなニュアンスを感じた。ドライながら、ほんのりと素朴な甘みを感じる。


ワインを吟味していると、パン籠を持ったギャルソンがやってくる。
3種類の自家製パンの中から、好きなものを好きなだけ取っていいらしい。


パンは薄切りのライ麦パンと小さな丸パン2種類(片方はプレーンで柔らかく、もう片方はハードで何種類かの穀物の粉が入っていそうなパン)。丸パンはほどよく温められていた。追加注文したカルピスバター(50円)をつけて頂く。

本日の前菜は、レンゲのような陶器の白いスプーンに乗った剥き身のエスカルゴ。


身が詰まったぷりっぷりのエスカルゴには、お約束の刻みパセリたっぷりの香草バターが。塩気が控えめでとてもマイルド。
スプーンに残ったバターは、もちろんパンで拭って跡形も残さない 笑

本日のスープは青豆の冷製ポタージュで、カクテルのように冷えたガラスのグラスに直接口をつけて飲む。


濃厚な豆の味の中にほんのりセロリのような香りが清涼感を添えている。

メインの仔羊の肩肉のスパイシー煮込みは、スパイシーなスープで煮込んだラム肉と野菜を炊いた玄米と押し麦にかけた一品。


店の内装同様、料理もとことんオーソドックスな王道フレンチなのかと思いきや、これは意外性のある一品。
老舗であっても型に嵌りすぎず、独創的なアイディアや遊び心を取り入れる余裕のあるお店って素敵だ。
ギャルソンが「フォークでは食べづらいので、カレーのようにスプーンでお召し上がりください」と言っていたけれど、確かにカレーみたいな料理だ(さしずめ「仔羊と夏野菜の北アフリカ風カレー 玄米・押し麦添え」とでもいったところか)。
野菜とスパイスの旨味が溶け込んだスープが美味しい。スパイスが主張し過ぎずあくまで上品な味わいで、エスニック風でありつつもフレンチレストランで出す一品にふさわしい料理になっている。
よく煮込まれたお肉が柔らかくて、繊維が口の中でゆるゆるとほどける。
別添えのハリッサ(赤唐辛子のペースト)を加えると、味がピリッと引き締まってより美味しい。
ちなみにこの料理と一緒に飲んだ先述の赤ワインは、ウイキョウのような香りがした(このワインは時間が経って温度が上がるつれて薬品系の香りが強くなっていった)。

デザートは2種類のジャムを挟んだカトル・カール。


カトル・カールというのはフランス語で4/4という意味で、小麦粉・バター・卵・砂糖の4(=カトル)つの材料が、それぞれ同量ずつ…つまり1/4(=カール)ずつ配合された生地を焼き上げたお菓子。
このお店のカトル・カールはとてもしっとりとしたきめ細かな生地でフレッシュな杏とブルーベリーのジャムが挟んである。軽い口当たりでいくらでも食べられそう。
一緒に頂いたコーヒー(+400円)も美味しかった。


デザートを食べながらコーヒーを飲んでいると、マダムがやってきて「お口に合いましたか?」と尋ねられた。
彼女は厨房にホールにと休む間もなく動き回りながら、手が空いている時にはテーブルを回り、料理の感想を訊いたり食材やワインにまつわる話をしたりと積極的に声をかけていた。
お店のホールにはマダム以外にも2人の若い男性スタッフがいたのだけど、1人は新人さんなのか、厨房でたびたびマダムから檄を飛ばされていた(と言っても、口調はいたって丁寧)ようだった 笑
まるでサッカー青年のように日焼けした、笑顔がまぶしいギャルソンさん…さすがにマダムの域にまで達するのは並大抵のことではないだろうけれど、ぜひこれからもお仕事頑張って頂きたい。




今回頂いたランチメニューは全体的にマイルドかつ軽めの万人向けの味つけで、量は少なめだった。沢山食べたい方にはいささか物足りないかと…(お腹いっぱい食べたい方は、もっと品数の多いコースを頼むべし)
1600円のコースでも、ワイン一杯と食後のコーヒーをつけると3000円を超えてしまうので、トータルで考えるとお値打ちランチ感はそこまでないかもしれない。
しかし、昼にこの価格帯でここまで丁寧なもてなしを受けながらゆったりと美味しいランチを頂けるお店はとても貴重だと思う。
次はぜひ、ディナーで再訪したい。


帰り際、まだランチタイムで忙しい中、マダムが店の外まで見送りに出てきてくれた。
「あら、雨が上がっているわ。さっきまで降っていたのに。お客様、晴れ女でいらっしゃるんですね」
にっこりと柔らかく微笑むマダムの笑顔に癒されつつ、「六本木」を後にした。






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オー・シザーブルフレンチ / 六本木駅乃木坂駅六本木一丁目駅
昼総合点★★★★ 4.0

2014年7月7日月曜日

【食べ歩きレポート】ベル―ガ(表参道)

土曜の晩、大学の美術部時代からの友人MさんとSちゃんと表参道のキャビア料理専門店 ベルーガで夕食を頂いてきた。表参道を通るたびに気になっていたお店で、今回念願かなって初来店。

ロート・アイアンの細工が施された手摺りが美しい螺旋階段を登り、黒い重厚な扉を開けると、思わず溜息。
表参道にこんな空間があったなんて…!
店内のアール・デコ調の内装の優美なこと。窓から見える表参道の風景が、まるで嵌め込み合成に見えてきそうなぐらいの別世界。


テーブルの上で燦然と輝く金色のお皿と金色のカトラリーたちに気後れしつつ、イラン産の3種類のキャビア食べ比べセットとシェフ特製コース(アミューズ・本日の前菜YOSAKOIキャビア添え・本日のパスタ・肉料理or魚料理・デザート・コーヒー)を注文。

運ばれてきたイラン産の3種類のキャビア食べ比べセットは、それぞれ金色のスプーンの上に盛られていた。
頼んだシャンパンが運ばれて来るのを待ちながら、金のスプーンの上で黒い真珠のように艶やかに輝くキャビアをうっとりと眺める。
ああ、なんという贅沢な時間…!
まだなにも口にしないうちから、私たちはすでに「贅沢」という気分をお腹いっぱい味わっている。


食べ比べセットのキャビアはセブルーガ、アセトラ、ベルーガの3種類。
コース料理の前菜にも国産のYOSAKOIキャビア(その名から察せられる通り、高知県産)というのが添えられていたので、計4種類のキャビアを味わえることに。



スプーンに乗ったキャビアを、一粒一粒噛みしめながら食べ比べてみる。
(これまでたまたまカナッペなどの上にのっかっていたキャビアを口にすることはあっても、積極的に「キャビアを食べよう!」と思って食べる機会はなかったので、なんだか新鮮)
YOSAKOIキャビアは国内で採れた魚卵を店内で加工しているらしく、弾力が強くてプチっと弾ける食感にフレッシュで透明感のある味わい。セブルーガは小粒で軽やかでほんのりブルーチーズの青カビのような香り、アセトラは味わいが濃厚でほんのり香ばしくて磯の香りが強く、大粒のベルーガはマイルドでクセがなく繊細な味わい。
それぞれ色、形、食感、風味、味わいの濃さなんかが違い個性があって食べ比べるのが楽しい。
いずれもフレッシュキャビアばかりなので、そのまま頂いてもよし、たっぷりのサワークリームと一緒にそば粉でできたパンケーキにのせてレモンをきゅっと絞って頂いてもよし……この食べ方がまた美味しい。ワインに合う!

コース料理のメインはホロホロ鳥のロースト(これもお肉がジューシーで美味しかった)だったけど、今日は終始シャンパンで通した。


キャビアとシャンパンの相性の良さには、まったく驚かされた(そしてこのお店のワインリストの中のシャンパンの品揃えの多さにも驚かされた。それだけこの組み合わせを愛する人が多いのだろう)。
もちろん銘柄にもよるのだろうけど、シャンパンはキャビアの生臭みを打ち消しつつ、旨味を引き立て、口の中に残る脂を爽やかに流してくれる。
ちなみに今夜飲んだのはこの2本⬇︎
・フィリポナ・シャンパーニュ ロワイヤル レゼルヴ ブリュット
・シャンパーニュ ピエール・カロ ブラン・ド・ブラン
特に前者のフィリポナは私好み!
蜂蜜や濡れた落ち葉のような馨しい香りに柑橘の皮のようなほのかな苦み…とてもグラマラスで叙情的(なんとなく、秋の曇った午後に紅葉した木々が美しい庭園で物憂げな美女に溜息をつきながら飲んで欲しい)なシャンパーニュ。
キャビアとの相性で言えば、すきっと爽やかで泡立ちの力強い後者の方がより合っているのかもしれないけれど。

食事をしながら、お店の方からキャビアについて色々とお話を伺うことができたのだけど、これがなかなか興味深いものが多くて食事に素敵な花を添えてくれた。
キャビアとなる卵を宿すチョウザメ(※サメの仲間ではないらしい)というのは古代魚の一種で、一億年以上前からほとんど姿を変えずに生きてきた生物学的にも非常に貴重な魚らしい(ちなみに前菜としてスモークされたチョウザメのお肉を頂いたけど美味しかった。古代魚=おいしくないという勝手な先入観があったのでびっくり)。
チョウザメが卵を産むまでには長い長い時間がかかるのだそうで、特に大型で成熟に時間がかかるベルーガは、なんと20年もの歳月を要するのだとか。さらにチョウザメは寿命が長く、(運悪く人間に捕まったりしなければ)数十年、中には百年ぐらい生きる個体も存在するらしい。
しかし、その長命が災いして、長生きする生き物の肉を食べると寿命が延びると信じる人々の間でその肉が珍重され、卵を狙う輩と肉を狙う輩の両方からつけ狙われているという哀れな魚。
乱獲で数が減ったチョウザメを保護するために漁獲量が制限され、天然物のキャビアがますます入手困難になっている昨今では、世界各地で養殖が試みられているそう。
それにしても、まさか日本国内でも養殖が行われているとは…
いつの日か、キャビアがもっともっと身近になる日がくるのだろうか。そうなったら嬉しいと思う反面、いつまでも神秘のベールを纏った食材でいてほしいような気もする。


これまで個人的に世界三大珍味の中では一番影の薄かった(キャビア好きの皆様ごめんなさい)キャビアの魅力に触れることができた、とても面白い食体験だった。
ベルーガでキャビアを堪能した後は、Mさんと二人で表参道を挟んだ向かいのカフェバー モントークでお酒とお茶を飲みながら終電まで話をした。
次は牡蠣を食べに行こうと約束。
楽しみ!












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ベルーガイタリアン / 明治神宮前駅原宿駅表参道駅
夜総合点★★★★ 4.0

管理人Mからのご挨拶

はじめまして、ご来訪いただきありがとうございます。
当ブログの管理人のMと申します。
世田谷在住の25歳の大学院生(専門は20世紀フランス文学)です。
この度、食い道楽が高じてこのようなブログを始めることにいたしました。

このブログでは、管理人の趣味である食べ歩き(あるいは呑み歩き 笑)のレポートを中心に、時々家ごはんや家呑み、お取り寄せグルメetc…私の身の回りの食の話題を扱っていきます。
食べ歩きレポートに関しましては、せっかくこういった人様の目に触れる可能性のある場で書くのですから、ただ単に「◯◯で△△を食べました。美味しかったです」ではなく、読んだ方が実際にそのお店に行ってみたくなるような、そして行かれた際には少しでもなにかご参考になるようなものをお届けできればと思っております。
なお、私は大のワイン好きでして、食べ歩くお店選びには偏りがあります(ワインが飲めて、かつワインに合いそうな食べものを頂けるお店が中心)。
エリアでいうと、渋谷・青山・表参道界隈や世田谷区内のお店が多いです。

ブログタイトルは、18世紀フランスの法律家、政治家で美食家でもあったブリア=サヴァランの名言«Dis-moi ce que tu manges, je te dirai qui tu es.» 「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人であるか言い当ててみせよう」より。
この言葉は私の座右の銘なのです。
なにか食べ物を口にする時、人間はその栄養分だけでなく、その食事から五感で感じ取ったものやそれが精神に及ぼす影響なども一緒に糧にしているのだと私は思います。
たかが食事、されど食事。
自分を心身ともに育む大切な一食一食、真剣に選ばなければ!という自戒の念も込めて。



それでは、すっかりご挨拶が長くなってしまいましたが…
不定期の更新ですが、ご興味のある方はお気の向いた時にでも覗いていただけましたら幸いです。











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