2014年10月6日月曜日

【食べ歩きレポート】バールアリメンターリ ダニエラ(下北沢)

ある日曜日の晩、下北沢のイタリアンレストラン バールアリメンターリ ダニエラで、数日前に誕生日を迎えたばかりの古い友人Hと食事をした。


はっきり言って、Hはおよそ食というものに執着のない人間だ。
食べものの好き嫌いはほとんどないし、決して美味しいものを美味しいと感じられないわけではないが、基本的に食べものは「食べられればそれでよい」。
彼女と私はかれこれ10年以上の付き合いになるが、食に対する価値観についてはいっこうに共有できそうにない。

だが、私は決して諦めたわけではない。
こういう人間に心の底から「美味しい!」と言わせる瞬間にこそ、美食とともに「してやったり!」というグルマンとしての至上の喜びを味わえるというものだ。

さて、今夜はそのご相伴にあずかることができるだろうか。






この日は仕事帰りのHと店内で待ち合わせ。
ダニエラは下北沢駅南口から代沢方面に10分ほど歩いたところにある。
閑静な住宅街の中に忽然と現れるちいさなイタリアンレストラン。



あかあかと灯るライトに吸い寄せられるように入店。
日曜の午後7時、私のほかに店内にはワインを飲みながら談笑するビジネスマンの集団が1組いるのみ。


店名にもなっている「バール」というのはイタリア語で軽食喫茶店、酒場のことを指す言葉らしいが、たしかにお腹がすいたらふらっと入れる食堂のようなカジュアルでアットホームな雰囲気だ。


2人掛けのテーブル席に案内されたが、席は少々手狭。
デート向きの色気のある店、めかしこんであらたまって食事をする店…ではなく、気のおけない友人や家族とワイワイにぎやかに食卓を囲むのがふさわしい店だと思う。
提供される料理の価格帯を考えると、ちょっとカジュアルすぎるような気がしないでもないけれど…居心地は悪くない。
小さな子どものいるファミリーでも気軽に入れそう(これは良し悪しかもしれないが)。


Hを待つ間に食前酒を一杯やることにする。
ドリンクのメニューを見ると、このお店ではイタリア ヴェネト州のスパークリングワイン、プロセッコをグラスでいただけるらしい。
以前イタリアに旅行中に寄ったヴェネチアで飲んで以来、大のプロセッコ好きなのでこれは嬉しい。
早速プロセッコを一杯注文。
水色はごく淡い蜂蜜色。少し青い黄桃のようなフレッシュな甘酸っぱさの後にピリリとドライな辛みが通り抜ける。軽やかで美味しい。
ちなみにこちらのハウスワインはグラス550円とリーズナブル。
日替わりのグラスワインは800円、ボトルは3000円〜から注文できる。




飲みながらメニューを眺めていると、Hが到着。
もう一杯プロセッコを注文し、彼女の誕生日を祝して乾杯。
さて、今夜は何をいただこうか。

手書きのメニューには美味しそうな料理が目白押し。
ワインに合うおつまみや惣菜メニューも充実していて(テイクアウトも可能)、酒飲みにもやさしい品揃え 笑
前菜・パスタ・メイン・デザート・コーヒーのシェフのおまかせコース(5250円)というのもあったが、今回は好きなものを好きなだけ頼もうということでアラカルトで注文することにする。




今回私たちが頼んだものは以下の通り。


前菜
・本日の鮮魚のマリネ
・福岡ふるの牛のタリアータ ルッコラ、パルメジャーノのサラダ
・卵のインココット 黒トリュフをかけて

パスタ
・コルドネッティ からすみをかけて

メイン
・ホロホロ鳥のロースト

デザート
・洋梨のタルト
・カンノーリ




(女2人とはいえ、メイン1皿パスタ1皿では足りないかとも思ったけど、前菜は2人でシェアしてちょうど良いくらいの量だったし、食べ終えてみるとこれで十分だった)



まずは料理に合わせて白ワインを…ということで、ソアーヴェをグラスで注文。


柑橘系のフレッシュでクリアな味わい。後味はピリリとドライ。わずかなライムの皮のような苦味が感じられる。
これはカルパッチョに合うこと間違いなし!

本日の鮮魚のマリネはイサキか真鯛とのことで、イサキを注文(うっかり写真を撮り忘れてしまったので画像はなし)。
イサキの旬はもう過ぎたはずだけど、身はプリプリで適度に脂がのっている。
先ほどのワインと合わせると脂の甘みが際立つ。


カルパッチョをぺろりと平らげてしまうと、牛肉のタリアータが運ばれてきた。


軽く炙った薄切りの牛肉には、よく脂がのっていて舌の上でとろけるよう。
これまで食べてきたタリアータはもっと肉が厚切りのものばかりだったけれど、薄切り肉にはまた違った美味しさがある。
ルッコラがたっぷりと添えられていて、脂が多いのにするすると食べられてしまう危険な前菜 笑


もうひとつ頼んだ前菜、卵のインココットは絶品!


ココット皿に詰まったクリームの中に生卵を入れて焼き上げてあるらしい。
仕上げに目の前で黒トリュフをすりおろしてかけてくれるのだけど、これが気前よくたっぷり。
卵のうまみが濃厚なクリームにトリュフの芳醇な香りが絡んで、もう……!!
お皿の底まで舐め回したくなるほどの美味しさ。
2人して美味しい美味しいと夢中で食べる。

Hをして「みんながこれを毎日食べられるなら、きっと世界は平和になるよ!」と言わしめた逸品。
(してやったり!)



お次はパスタ、『コルドネッティ からすみをかけて』。


コルドネッティというのは細めの平打ちパスタのことらしい。
ラーメンの太麺にも少し似た食感の、ソースによく絡むもちもちしたコシのある手打ち麺。この麺自体がかなり美味しい。
からすみの濃厚なうまみとレモンピールの爽やかな香りとほろ苦さが絶妙にマッチしている。
結構塩気がきいていてお酒がすすむすすむ。


メインが出てくる前に赤ワインを頼む。
メイン料理のホロホロ鳥のローストに合いそうなワインを尋ねたところ、ロッソ・ディ・モンタルチーノをおすすめいただいたので、迷わずそれを注文。


よく熟れたアメリカンチェリーのようなほどよい甘みと酸味。ほんのり土の香りもする。
とてもジューシーで溌剌とした健康的な色気のあるワインという感じ。
このロッソをさらに熟成させたブルネロ・ディ・モンタルチーノがワインの女王様だとすると、さしずめロッソは王女様といったところだろうか。

メインのホロホロ鳥のローストは、部位の違う3種のホロホロ鳥の肉のローストを盛り合わせたもの。


塩コショウのシンプルな味付けで肉の味わいを楽しめる一皿になっている。
ホロホロ鳥の鶏肉よりも赤身がちでうまみが濃い肉には、ロッソのようなミディアムボディの赤がちょうどいい。
キジの仲間らしいが、以前食べたキジ肉のローストと比べると癖がなくて食べやすいような気がする。



食後にカフェラテと一緒に頼んだカンノーリは、ココアを練りこんだ春巻きの皮のような硬い生地でリコッタチーズのクリームを包んだデザート。


シチリア発祥のお菓子で、映画『ゴッドファーザー』にも登場するという(劇中に「銃は置いていけ。カンノーリは持ってきてくれ」というセリフがあるらしい。私はこの映画をDVDで2度も見たはずなのにまったく覚えていなかった)。
砂糖が入っていない外側のビター生地に洋酒がきいたリコッタチーズのクリームの上品な甘み、砂糖漬けのチェリーがアクセント。
サックサクの心地よい食感もあいまって、くせになりそうな美味しさ。
何本でも食べられそう!

Hのデザートは洋梨のタルト。
事前にお願いしていたので、お店の方がお皿にイタリア語でバースデーメッセージを書いてくださった。
Buon Compleanno!!
(お誕生日おめでとう!!)




この晩のお会計は2人で13000円ほど。いただいた料理とワインの内容を考えるとちょっと安いくらい。
ゆったりと寛ぎながら本格的なイタリア料理を食べられるいいお店だ。
また来よう。
晴れた日に外のテラス席でランチ…なんていうのもきっと素敵だろう。

Hも気に入ってくれたようでなにより。
彼女から次はどんな「美味しい」を引き出そうか…目下画策中である。