2014年8月9日土曜日

【食べ歩きレポート】deco(渋谷 神南)

ある平日の昼過ぎ。
炎天下の中、私は神南の坂道を歩いていた。
道玄坂、宮益坂、スペイン坂、オルガン坂…つくづく思うが、渋谷は本当に坂の多い街だ。

今日の午後は宇田川町のアップリンクに友人Hから猛烈に薦められたホドロフスキーの『リアリティのダンス』という映画を観に行く予定になっている。
「そうだ、今日こそ神南のdecoでランチを食べよう!」と思い、勢い込んで家を出てきた。
真夏の猛暑にも負けず、連なる渋谷の坂道にもめげず…貧弱な身体に鞭打った甲斐があって、なんとかランチタイムのラストオーダーの14時には間に合いそうだ。

decoはジビエが美味しいと評判のフレンチレストランで、ランチタイムには(ジビエは出ないが)とてもお得で美味しいコースメニューをいただけるとのこと。
前々からずっと一度は訪れたいと思っていて、近くに用事があった時についでに寄ろうと思っていたのだけど、駅から離れた少し不便な場所にあることもあって、なかなかその機会がなかった。
本日、ついに念願の初訪問…!


お店は渋谷・神南のアパレルショップ(SHIPSやらFREAK'S STOREやら)が密集した通りから一本細い坂道を上がったところにある。
地下にあるので、気をつけて見ていないとうっかり見落としてしまいそう(一階にメニュー黒板がでているけれど、建物のオシャレさもあいまって、遠見に見るとヘアサロンかなにかのメニュー表と勘違いしかねない)。



あった、decoのランチメニューが書かれた黒板!
これが噂の2100円のランチコースか…どのメニューも気になる。


地下に下りる階段の中程には、ディナータイムのメニューも立て掛けられている。


黒板には大きく「盛夏」の文字。
メニューも随所に夏を感じさせるラインナップ。季節感を大切にするお店は素敵だ。
おまけに「夏ジビエ」だって…?
ジビエ好きとしては、これはぜひお店の方に詳しいお話を伺わなければ。
勇んで勢いよくドアを開ける。





ドアが開いた瞬間、店内に満ちていた活気に軽く気圧される。
カウンター6席、テーブル席12席ほどの店内は、ランチタイムL.O.間際の時間にもかかわらず女性グループとカップルでほぼ満席。
運良くカウンターの真ん中の席がひとつだけ空いていたので、そこに通される。
危なかった…じきにラストオーダーの時間だし、もし2人以上で来ていたら、またしてもここのランチを食べ逃していたかもしれない。

お店の内装は白とブラウンでまとめられていて、木材の風合いが温かみを醸し出している。
気取り過ぎず、カジュアル過ぎず…適度に肩の力を抜いて思う存分食事を楽しめそうな居心地のいい空間。
カウンターからは厨房の様子を間近に眺めることができ、ライブ感たっぷり。
厨房では2〜3人(途中で1人増えた)のスタッフが忙しなく調理をこなしている。
給仕・接客は主にサービス兼ソムリエの若い男性が一人で行っているようだ。


ランチタイムのメニューは、前菜+メイン料理+パン+デザート+コーヒーで2100円のコースと2100円のコースに前菜を1品増やした2950円のコースとメインを1品増やした3300円のコースがある。


ランチタイム限定のお得なグラスワイン、ランチワインは赤白ともに800円で、その日のランチメニューに合わせて替わるらしい。



今回私がいただいたものは以下の通り。

・前菜: タコのバジルソースマリネ
・メイン: 牛カイノミのロースト 夏野菜を添えて
・パン
・デザート: 白桃のコンポートとジャスミンのジュレ バニラアイス添え
・コーヒー
(以上、2100円のコース)

・ランチワイン白(グラス一杯800円)
Château la Clémence 2006(グラス一杯1200円)



前菜、メインともに肉料理と魚料理がそれぞれ一種類ずつあり、どちらか選ぶことができる(デザートは選択肢なし)。
この日のもうひとつの前菜(肉)はパテ・ド・カンパーニュ、もうひとつのメイン(魚)は真鯛のポワレ。
さんざん迷ったけれど、今回は魚➡︎肉でいくことにする。

料理を注文した後、サービス兼ソムリエの福岡さん(帰り際にお名前を伺った)に「お飲み物は?」と訊かれ、もちろんワインをと答える。
「では、白からお出ししましょうか…グレープフルーツのような爽やかな香りのあるワインです」
とサーヴしてくださったのは、本日のランチワイン(800円)の白、ブルゴーニュのアリゴテ。


おっしゃる通りグレープフルーツの皮のような僅かに苦み走った爽やかな香りに続いてナッツオイルのようなマイルドな香味とコクが現れる。酸味は控えめ。


ワインと一緒に出されたパンは、ぎっしりと身の詰まった、粉の味がしっかりと感じられるバゲット(ひとつ食べ終えるともうひとつ持ってきてくださったので、どうやらおかわり自由らしい)。
シンプルな味わいとかすかな塩気が食事の味を引き立てる。


前菜が出てくる前にうっかり飲みきってしまわないよう、ちびちびとワインを味わいながら店内の様子を眺めていると、カウンターの端に置かれている花瓶に孔雀と雉のものとおぼしき羽根が飾られていることに気付く。


これはまさか…お店で供するために毟った鳥の羽根では?
そちらを凝視していると、「これはディナーでお出しする野鳥の羽根です…ジビエ、お好きですか?」と福岡さん。やった、予感的中!
「大好きです」と即答すると、なんとあとでジビエの実物を見せてくださるとのこと。
食事の楽しみがさらに増えた。


注文してから20分ぐらいで、前菜のタコのバジルソースマリネが出される。
2100円のコースの前菜とは思えない、この目にも鮮やかな美しい盛り付け…!


ぷりぷりで柔らかいタコともったりとした濃厚なバジルソースと口の中でプチッと弾ける甘酸っぱくてジューシーなフルーツトマトの幸福な組み合わせ。
このマリネを食べながら飲むと、やや尻すぼみ気味に感じられたワインの味わいに、ドライでスパイシーなニュアンスの余韻が加わる。バジルとの相性がとても良いみたいだ。



メイン料理をいただく前に、メインに合わせた赤ワインをグラスでいかがですかと勧められる。
ランチワインでもいいけれど、前菜が美味しかったのでメイン料理にも期待大だし、せっかくならより料理に合うワインと一緒にいただこう。
好みを訊かれたので「華やかさがあって軽すぎないものを」とお願いすると、福岡さんは「なるほど…いいのがあるので持ってきますね!」と、軽やかな足取りでワインセラーへ。
(ちなみにこのお店では常時赤・白それぞれ4〜5種類のワインをグラスで提供しているそう)

今回選んでいただいたのは、ボルドー ポムロールの赤ワイン Château la Clémence 2006(グラス一杯1200円)。


なめらかなタンニン、スパイスで味付けされたチェリーやプラムのような洗練された果実味…エレガントな味わいの中に、細かい粒子が味蕾をひとつひとつ刺激するようなシャープな辛味がある。
まさに華のある味わいで、とても私好みのワイン。


うっとりと美味しいワインに酔いしれていると、メイン料理の牛カイノミのローストが登場。


お肉の見事な焼き色と、ドーンと盛られた付け合わせの野菜の迫力に、思わず目を瞠る。
カイノミは濃いピンク色の肉の表面にうっすらと血の色が滲むレア…最高の火の入り加減!
脂身のない肉を添えられたマスタードソースでさっぱりと食べても美味しいし、粗挽き黒胡椒がかかっている部分はそのままで食べても肉の味が引き立って美味しい。
肉の香り・味わいと合わさることでワインがほんのり甘みを帯び、より官能的な味わいを増すように感じられた。

カイノミのローストにたっっっぷりと添えられた(むしろ量的には主役級 笑)夏野菜は、シェフ自ら現地に赴き、契約した千葉県の農家から直接仕入れているという。
土の香りと甘み・旨みが濃くて、大地のパワーを感じられる。



食事をしていると、おもむろに木製のトレイに入った食肉加工前のジビエの実物がカウンターの上に運ばれてきた。
隣で食後のコーヒーを飲んでいた女性グループのリクエストで出てきたようで、ついでに私も見せてもらう。
まだ羽根を毟られていない孔雀と雉、毛皮のついたままの仔猪を前にして「かわいそう!食べられない!」「お肉食べてる時に見なくてよかったあ」とわーきゃー騒いでいる彼女たちの隣で、カイノミを頬張りながらじっと眺める。

横から注がれているやたら熱い視線に気が付いたのか、福岡さんがジビエの載ったトレイをこちらに持ってきて間近でよく見せてくださった。

なんという食事風景 笑

自然が生み出す造形美…鳥たちの羽毛や猪の毛並みの美しいこと。
「これはどこで獲れたものなのですか?」
「どこを撃って仕留められているのですか?」
「どんな料理になるのですか?」
隣の女性グループが明らかに引いているのも構わず、せっかくなのであれこれ質問する。

孔雀と雉

孔雀は沖縄の石垣島で獲れたもの(孔雀は本土では禁猟鳥だけど、孔雀による食害が深刻化している沖縄県では害獣指定されており、捕獲が可能らしい)で、ゴーヤやコーンなどを主食にするためその肉にはどこか南国を感じさせる味わいがあるという。

仔猪

まだうっすらと背中に縞模様が残る、ウリ坊に毛が生えたような(もちろんウリ坊にだって立派に毛は生えているが)幼い猪。蹄がまだツルツルのピカピカで、野山を駆け回った月日の短さを物語っている。
筋肉の未発達な肉はとても柔らかくミルキーでまろやかな味わいらしい。
一頭丸ごとローストにして供されるのだとか。


ジビエたちを眺めながらメインを平らげると、デザートが運ばれてくる。
本日のデザートは白桃のコンポートとジャスミンのジュレ バニラアイス添え。


すでに帰った隣の女性グループのデザートは紅茶のブランマンジェだったようだけど、それは品切れになったらしい。
しかし、白桃は大好物なのでむしろ得した気分。
ガラスの器とコンポートの下に敷かれた薄桃色のジャスミンのジュレが目にも涼しげ。 
桃にジャスミン…夏を感じる組み合わせ。それもフェミニンな夏のイメージ。
白ワインで煮てあるという旬の白桃のコンポートは、とてもジューシーで上品な甘さ。スプーンで簡単に切れてしまうほど柔らかい。
ほんのり酸味のあるさっぱりとしたジャスミンティーのジュレとバニラビーンズがぷちぷち入った濃厚なバニラアイスと一緒に食べると、至福の瞬間が訪れる。
異なる味わいと温感の絶妙なコンビネーション。
デザートまで決して抜かりはない。




食後のコーヒーを飲みながら、素晴らしい昼食の余韻に浸る。

ふと気が付くと、店内に残っている客は私一人になっていた。
愉しい食事に思わず時間を忘れてしまった!と焦ってお暇しようとしたら、先ほどの私と福岡さんとの会話を聞いていらしたのか、「ジビエがお好きなのですか?」とお店のシェフが来られて、色々とジビエにまつわるお話をしてくださった。
こちらのシェフは、なんとご自分でも狩猟をなさるのだとか!
実は私もジビエ好きが高じて狩猟に興味を持ち始めまして…と告白すると、「それでは『狩りガール』(山ガールならぬ、狩りガール。近頃狩猟をする女子のことをこう呼ぶらしい)になられてはいかがですか?」と素敵なお誘いを受けた上、渋谷の銃砲店の場所まで教えていただいた 笑

シェフは本当にジビエがお好きな方のようで、お話していてジビエに対する愛情と情熱をひしひしと感じた。
こんな方が作るジビエ料理が美味しくないはずがない…!
近いうちに必ずジビエをいただきにディナーで再訪することを決意し、お店をあとにする。


お会計は4100円。
ランチの価格としては決して安くはないけれど、料理もワインも美味しく、お値段以上の価値がある幸せな昼食だった。
なぜ私はもっと早くこのお店に来なかったのだろう…こんなに素晴らしい食事にありつけるのなら、神南の坂道などなにほどのものでもないではないか!と過去の自分の怠慢を猛省。
その分、これから足繁く通わせていただくことにしよう。
またひとつ、お気に入りのお店ができた。






…と、いうわけで。
近いうち(8月、9月中)に私とdecoにジビエディナーを食べに行ってくださる方を募集します 笑
美味しいワインを飲みながら、ご一緒に夏ジビエ料理に舌鼓を打ちませんか?
予算はワインを含め1人15000円前後(に収めたい)。
ご興味のある方はMまでご連絡ください!

2014年8月4日月曜日

【食べ歩きレポート】キッチンプラス(自由が丘)

時々無性においしい洋食を食べたくなる。 

フレンチでもイタリアンでもない、あくまでも「洋食」である。
明治大正期の日本人の西洋への憧れが詰まった、白いごはんによく合う西洋風日本料理…それが洋食。
もともとは文明開化の頃、来日する外国人向けに見よう見まねで作られた擬洋風建築ならぬ擬洋風料理がルーツらしい。

以前、横浜のとあるホテルのレストランで明治時代のレシピを再現したライスカレー(「カレーライス」ではない、あくまでも「ライスカレー」)を頂いたことがある。
蛙の肉が入っていたり、玉ねぎの代わりに長ねぎが使われていたり、あまりスパイス感はなく魚介の出汁の味わいが強かったり…具材から味つけからなにから現代のカレーとはかなり異なる、けれどそれはそれで不思議な魅力のある一皿になっていた。
擬洋風の建築同様、まだ「和と洋の融合」「和洋折衷」と言えるほど洗練されてはいなくて、粗削りで色々と甘いところやアンバランスなところもあるけれど、御一新の時代を生きた日本の職人たちのまだ見ぬ西洋に対する強い憧憬と、「こんなの作りたい!」というやや上滑り気味の激しい情熱が感じられる、愛おしいカレーだった。
現在私たちが食している洋食は、そんな擬洋風料理の流れを受け継ぐ料理なのだ。







閑話休題。



というわけで。
洋食食べたい病の発作が起きたある平日の晩、自由が丘の行列のできる洋食屋さん キッチンプラス(Kitchen+)を初訪問。

お店は自由が丘駅北口から7〜8分ほど歩いた自由通り沿いにある。



周囲の風景に溶け込むごくごく地味な店構えで、気をつけていないとうっかり見落としてしまいそう。
ディナータイムのお店の開店時間は18時。
私がお店の前に着いた17時45分の時点では、まだ並んでいる人はいない。
どうやら本日のディナータイムに一番乗りできそうだ。

開店を待つ間になにを注文するか決める。
ドアの前に立て掛けられたメニュー黒板には、ハンバーグにオムライスにメンチカツにビーフシチュー…魅惑の王道洋食ラインナップ。
私の目に留まったのは「ビーフカツレツ  デミグラスソース」の文字。



先日、ネイルサロンのテレビでドラマ『ランチの女王』の再放送を見ていて、劇中で竹内結子が美味しそうに頬張るビーフカツレツを無性に食べたくなったのを思い出した。
そうだ、今夜はビフカツにしよう。
店の中から聞こえてくるハンバーグのタネを勢いよく掌に叩きつけて空気を抜く小気味良い音に、少しだけ心が揺らぐけれど…ハンバーグはまた今度と自分に言い聞かせる。


いよいよ18時のオープンの時間を迎えると、お店のマダムが笑顔で迎えてくれた。
間口が狭く奥行きが深い鰻の寝床のような店内には、Iの字形のカウンターテーブルがひとつに椅子が8席あるきり。
ご夫婦二人で切り盛りする、小さな小さなお店だ。
開店までに並んでいたのは私を含め3組だったけれど、お店が開くやいなや常連さんとおぼしきお客さんたちがどんどん入ってきて、20分も経たないうちにたちまち満席になってしまった。
一人か二人で来ているお客さんばかりで、女性一人でもとても入りやすい雰囲気。

カウンターの中では黙々と調理をしているご主人の傍でマダムがてきぱきと給仕と接客をこなす。
私のあとに入ってきたお客さんのほとんどは常連さんらしく、マダムと世間話をしながらなにを注文するか決めている。
カウンターの中は狭いけれど整理整頓されていて清潔感がある。


カウンターの内側も外側も本当に必要最低限のものしか存在しない非常に簡素な空間ながら、気負わないおしゃれ感が漂っていて、いわゆる懐かしの「洋食屋」的な雰囲気とは一線を画している。
ベーシックなデザインの品々をセンス良く配置した店内にはシンプルな美しさがあって、老若男女問わず居心地よく過ごせる空間になっている。


今夜の私のオーダー内容は次の通り。

・瓶ビール(アサヒスーパードライ 小瓶)450円
・ニース風サラダ(ハーフ)370円
・かき玉子のミネストローネ340円
・ビーフカツレツ1300円
・ライス(S)150円


店内の黒板メニューには好物の田舎風お肉のパテなどもあり、思わず飛びついてしまいそうになったが…自分の胃の容量を考えて今夜は断念。
メニューによるとワインはグラス500円、デカンタ1900円、ボトル2700円とかなりリーズナブルに頂ける(ただし、種類は1種類のみの模様)ようだけど、カツにはビールの方が合うかと思い、この日はスーパードライの小瓶を注文。
ちなみにこのお店に置いてあるビールはアサヒスーパードライ、プレミアムモルツ、エビスの3銘柄で、いずれも小瓶オンリー。

注文するやいなや、すぐによく冷えたビールが出てくる。


日頃からビールはよく飲むし、瓶入りのコロナやバドワイザーなんかの海外のビールも割と飲むけれど、国産の瓶ビールを飲むのはとても久しぶりのような気がする(個人的に瓶入りのスーパードライや一番搾りは旅館や寿司屋で出てくる飲み物のイメージ)。
飲み慣れたアサヒスーパードライだけど、いつも飲んでいるものと味わいが違うように感じられるのは、やはり瓶入りだからだろうか。


注文してから5分ほどでニース風サラダが提供される。


このお店の人気メニューのひとつらしく、私以外のお客さんもほとんどが注文していた。
レタス、インゲン、ゆで卵、ツナ、アンチョビ、グリーンオリーブ、スライスした玉ねぎ、ゆでたジャガイモ、プチトマト…ドレッシングはフレンチドレッシング。
なにひとつとして過不足ない、正統派サラダ・ニーソワーズ。
プチトマトが湯むきしてあってドレッシングがよく滲みている。
こういうひと手間がとても嬉しい。
ハーフサイズでもかなり食べでがある。1人分なら十分な量。


サラダのあとに出されたかき玉子のミネストローネは、ざく切りのベーコンと野菜とかき玉子が入って具沢山。


トマトの味はしっかりとするけれど、酸味はとてもマイルド。
玉子を入れるアイディアは今度家でミネストローネを作る時に使わせて頂こう。
スープを飲んでいると、カウンターの内側奥の厨房から揚げ物を揚げるいい音と香ばしい匂いが漂ってきた。
本日のメインディッシュがそろそろやってくる頃だろうか…じわじわと期待が高まる。


そして、いよいよビーフカツレツの登場。


揚げたてほやほやで湯気が立っているカツは、食べやすく切り分けられている。
切り口は食欲をそそるピンク色。
(私としたことが、断面図を撮り忘れた…なんたる失態!)
少し焼き加減にムラがあるけれど、大方ミディアムレア程に火が通った牛肉を包み込む衣は、さくっさくの軽い口当たり。
デミグラスソースは酸味と苦味がほどよく効いていて味わい深い。
これはぜひ、このお店のハヤシライスやビーフシチューも食さなければ。
添えられたマスタードをソースと一緒にカツにつけて食べると、これがまたよく合う。
付け合わせの温野菜も彩りが綺麗でおいしい。
ああ、白いごはんが進む進む…






万人に受ける洋食の王道を行きながら、さりげない味付けや盛り付けのセンスの良さで一皿一皿を適度に(肩肘張らない程度に)垢抜けたものにしているあたり、このお店のバランス感覚は絶妙だと思う。
まるでお気に入りの普段使いの椅子のように、洗練されたシンプルさで飽きのこない料理が頂ける洋食屋さん…これは通ってしまいそう。

食べ終わって外に出ると、店の前には5〜6人ほどの入店待ちの列ができていた。


もう少しお店が広かったら(あまり待たずに食べられるし、もっとのんびり食事を楽しめるのになあ)…と思ってしまうけれど、きっと今ぐらいの大きさがご夫婦二人きりで切り盛りするにはちょうどいいのだろう。

お腹いっぱい食べて、ビールも飲んでお会計は2610円(税込)。
メイン料理+ライスのみの注文であれば、ディナータイムでも1500円前後におさまると思う。
ランチタイムにはメイン料理+スープ+ライス+コーヒー付きで1000円前後のお得なランチセットがあるらしいので、今度ぜひそちらも利用したい。